チケット高騰&厄介な観劇ルール…加速する“演劇離れ”は止められない?ひろゆき氏「言いたいことを言う若者はYouTubeに流れた」
■劇団関係者「ビジネスケースとして成立していないところから始まっている」
演劇業界に20年携わる、演出家の吉野翼(たすく)氏は「『劇団の崩壊』と言うより『劇団性の崩壊』」と評する。「1960年代に始まった小劇場界は、ビジネスケースとして成立していないところから始まっている。お金に関係なく訴えることが主軸にあった」。自らも劇団時代は「バイトして、劇団にプールしたお金を劇場費に充てる」生活だったという。 その上で、「最近は“劇団性”と“集団性”を保つのが難しい」と指摘する。「役者もスタッフも外注になり、『好きだからやりたい』ではなく、金銭を払わなければならない状況だ。こうしてチケット代が上がる一方で、小劇場界では役者に適正な出演料が払われているか疑問もある」。 エンタメ業界全体から見た、演劇の立ち位置についても「つまらなくなった」と語る。「技術力の低下と、(個人ではなく全体を好きになる)“箱推し”の劇団性がなくなり、目に見えないダイナミズムが失われた。投げっぱなしや、“解”を持たずに思いをぶちまける芝居や、作品より役者の顔で売る作品が増えている」と、その変化を説明した。
■演劇界に未来は?ひろゆき氏「マニア同士の文化がどんどん値段を高めている」
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、演劇界の現状を「映画界と似ている」と分析する。「俳優も脚本家も、ステップアップするキャリアパスがない。アメリカではオフ・ブロードウェイからブロードウェイへ上がる流れがある。しかし日本では、小劇団の人は小劇団で終わり、劇団四季に出るわけではない。絶望的に未来がないような状況が問題だ」。また「マイナー映画出身の人が、東宝で突然撮ることは珍しい」として、「せっかくいい役者や脚本家がいるのに、構造的な問題が横たわっている」との持論を語る。 一方で、音楽業界では、“リアル”が評価されつつある。「配信によりCDが売れなくなった結果、ライブが盛り上がっている。物販でもうける仕組みができて、ライブに対する期待感が高まった。それをなぜ演劇が捉えていないのか」と疑問を投げかけた。 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「言いたいことを言う若者」は演劇ではなく、YouTubeへ移行していると指摘する。「コムドットやフィッシャーズ、東海オンエアのように、若くてエネルギーがあり、人前で何かしたい人が流れた」。 成功をつかむまでの道筋も異なりそうだ。「ミュージシャンやゲーム実況者も、まず配信やYouTube動画から入り、ファンが増えたらリアルイベントへ行く。お笑い芸人も、配信で人気になって、吉本の舞台に立つような逆転現象が起きている。演劇もそれをやるべきではないか」。 収益面においても、「演劇好きの中で回すのではなく、社会に対して『面白いイベントだから行ってみよう』という空気感を作ってはどうか」と提案した。「マニアが集まるほど、新人が入らなくなる。マニア同士の文化がどんどん値段を高めている。今のうちになんとかしないと、劇場文化はなくなってしまう」。 (『ABEMA Prime』より)