巨人まさかの25失点大敗、ナベツネ激怒の事件「ファンへの冒とくだ!」…落合博満40歳が“最悪の空気”だったジャイアンツをわずか一振りで変えた夜
いきなり度肝を抜く“落合の一振り”
チーム状態は上向かず、グラウンド外でもゴタゴタ続き。頼みの落合も、オープン戦後半を11打席無安打で終え、400勝投手の金田正一は年齢的な衰えを指摘した。 「オープン戦の落合の打席を見たが、昔に比べて打つポイントが(前になり、打ち方が)すごくせっかちになってしまっているのう。あの程度のバッティングなら、ピッチャーが腕の振りを遅らせたりすることでどうにでも料理できる。昔はもっと引きつけて打っていたのに」(週刊ポスト1994年4月15日号) 中日時代はオープン戦の結果がどうであれ周囲が騒ぐことはなかったが、絶えず注目を浴びる巨人の環境では一挙手一投足を監視されているようでもあった。そして、原も左アキレス腱の部分断裂からの復帰が見えず、開幕二軍スタートが決定。これで開幕ダッシュに失敗したら、そのままチームが崩壊しかねない。1994年開幕前の長嶋巨人は、そんな危ういバランスで成立していた。 だからこそ、落合にとっても、巨人にとっても、この開幕戦だけは絶対落とせない―。そんな状況で迎えた94年4月9日の広島とのオープニングゲーム。40歳の第60代四番打者は、いきなり超満員の観衆の度肝を抜く。2回裏の第2打席で東京ドームの左翼席中段に、挨拶代わりのホームランを叩き込んでみせるのである。 いつもより早足でダイヤモンドを一周すると、ホームベース後方でファイヤーガールから手渡されたミニジャビット人形をグラウンドに落としたが、すぐ拾い上げ、落合は少し照れ笑いをしたようにも見えた。興奮と熱狂の渦が球場全体を支配する。 一塁側ベンチ前では、満面の笑みで殊勲の背番号60を迎える、長嶋監督の姿があった。 <前編《大乱闘》編から続く>
(「ぶら野球」中溝康隆 = 文)
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