世界自然遺産の屋久島に、いまなぜ「THE NORTH FACE」だったのか!?【前編】
これらの品揃えの先に見据えているのはズバリ、リピーター客だ。 「屋久島は世界的に有名な大自然の島。国内外から非常に多くの旅行者がいらっしゃいます。海外からのお客さまは、まず富士山を訪れ、次は屋久島に向かうというのが定番になっているようです。ただ、その多くは有名な縄文杉を見たら満足され、屋久島訪問はそれで十分、となってしまう。つまり、リピーターが少ないことがこの島の課題なのです。屋久島の西部林道は世界自然遺産に選ばれています。ウミガメが産卵する美しい浜もあります。この店は、屋久島のそうした縄文杉以外の新たな魅力を伝え、一度、屋久島を訪れた皆さんには必ずリピーターになっていただけるよう、情報発信していく場になればと考えています」(前出・森さん) というわけで、多くの屋久島ビギナーが求めるであろう登山・トレッキング用品などのレンタル業務も、ザ・ノース・フェイス 屋久島ではおこなっていない。限られた人員、スペースでのオペレーションの問題もあるが、現地では、すでにそうした業務で生計を立てているレンタル業者もいる。彼らと競合状態になることは避け、なるべく共存共栄していきたいとの想いがあるからだ。 そんな同店の進出を、島の人びとも歓迎している。宮之浦地区で食堂を営む女性は、「屋久島には洋服屋さんが一軒もないんです。これまでは、(九州本土の)鹿児島に船で渡ったときに、向こうでまとめ買いするしかなかったのですが、オシャレなノースフェイスさんの服が地元で買えるようになるとは! うれしいですね」と語ってくれた。
開店前日の3月15日夕刻、同店は「多くの島民の皆さまをご招待した」(関係者)うえで、お披露目パーティを開いた。屋久島の食材をつかったケータリングのフード&スイーツと、特産の柑橘「たんかん」の濃厚ジュース、クラフトビール、屋久島サングリアなどをたくさん用意して。 午後5時、島の人たちが続々と環境文化村センターに集まってくる。家族連れ、年輩の夫婦、女性グループ、子どもたち……。最初は皆、遠慮がちに。そのうち慣れてくると、思い思いに店内を見て回り、ケータリングフードを手に取って、環境文化村センター前庭などに座り、飲んで食べて笑って……と楽しんでいた。