日銀・黒田総裁会見4月25日(全文1)平成はデフレとの戦いだった
今日の決定は金融緩和の強化という理解でよいか
読売新聞:幹事社から伺います。本日の展望レポートでは、2021年度におきまして目標とする2%になお届かない1.6%という見通しが示されました。一方、本日の決定内容では、フォワードガイダンスの明確化、あるいは強力な金融緩和の継続に資する措置ということが決定されたわけですけれども、今日の決定内容というのは物価目標の実現に向けた金融緩和の強化、あるいは追加の金融緩和であるというような理解でよろしいでしょうか。 黒田:先ほど申し上げましたとおり、わが国の景気は先行き基調として緩やかな拡大を続けるとみられ、物価も2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。もっとも海外経済の動向をはじめ、経済・物価の先行きをめぐる不確実性は大きいと思われますし、また物価安定の目標の実現にはなお時間が掛かることが見込まれております。 こうした認識の下、日本銀行は物価安定の目標の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていくという政策運営方針をより明確に示すことが重要と判断いたしました。このため、日本銀行の金融緩和姿勢に対する市場や国民からの信認の強化に資するよう、政策金利のフォワードガイダンスを明確化することといたしました。 また適格担保の拡充など、円滑な資金供給や市場機能の確保に資する措置を講ずることとしたわけでございます。このような対応は強力な金融緩和の継続に対する信認を高め、物価安定の目標の実現をより確かなものとすることに資するとともに、金融市場の安定にもつながるものというふうに考えております。
平成の金融政策に対する所見を聞きたい
読売新聞:幹事社から最後1問お伺いします。本日の決定会合、定例の会合としては平成時代最後ということになっておりますけれども、この30年あまりの金融政策を振り返って、総裁のご所見、あるいはまた新たな令和の時代に向けての決意のようなものがございましたら、お願いいたします。 黒田:私自身は日本銀行の総裁に就任したのが2013年の3月でありますので、6年少しということでありまして、平成時代30年全体を振り返るというのも、ややせんえつですけれども、現在の私から見て、やはり平成時代のわが国の金融政策というのは、やはりデフレとの戦いであったというふうに総括できるのではないかと思います。 いわゆるバブル崩壊以降、金融機関の破綻による景気の急速な悪化もあって、潜在成長率は趨勢的に低下し、景気に中立的な実質金利ではいわゆる自然利子率も低下いたしました。同時に物価上昇率も趨勢的に低下し、緩やかな下落に転じてきました。 このため金利面では平成10年を過ぎたころには短期金利がゼロ制約に直面することになりまして、景気低迷やデフレから抜け出すのに十分な水準まで実質金利を引き下げることが難しくなったわけであります。平成最後の10年間に生じたリーマン・ショックや欧州債務危機、東日本大震災などの出来事もデフレから抜け出そうとする日本経済にとって大きな試練になったと思います。 そうした状況に直面する中、日本銀行はデフレを克服するため、伝統的な短期の政策金利の引き下げといった政策にとどまらず、さまざまな新しい施策、いわゆる非伝統的な金融政策手段というものを活用してきたわけでして、金融政策運営の観点から平成時代を振り返りますと、多くの国に先駆けて非伝統的な金融政策に挑戦し、進化させてきた時代と言えるのではないかと思います。 そして、平成25年には2%の物価安定の目標を定め、そしてそれまでよりも一段と強力な量的・質的金融緩和を導入しました。現在でも長短金利操作付き量的・質的金融緩和という強力な金融緩和を粘り強く続けているわけであります。こうした枠組みの下で、わが国の経済は大きく改善し、消費者物価の前年比もここ数年プラスの状況が定着しております。このように、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況で、平成の終わりを迎えることができたというふうに思います。 もっとも、これまでのところ2%の物価安定の目標は実現できていないわけでありまして、元号が令和に変わっても物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資するという日本銀行の使命は変わらないと思います。今後ともそうした使命を果たすべく、わが国の中央銀行として最大限の努力を続けていく所存であります。 読売新聞:それでは各社お願いします。