バイデン氏による息子への恩赦、各方面から反発の声 米政府は釈明に追われる
バーンド・デブスマン・ジュニア、マデリン・ハルパート、BBCニュース アメリカのジョー・バイデン大統領(民主党)がこれまでの発言を翻し、息子のハンター・バイデン氏(54)に恩赦を与えたことで、ホワイトハウスが釈明に追われている。 ハンター氏は、連邦法違反の二つの事件について裁判で有罪とされ、量刑言い渡しが今月予定されていた。ホワイトハウス報道官によると、バイデン大統領は自分に対立する勢力からハンター氏が迫害を受けないよう、同氏に恩赦を与えた。対象は、過去10年間に犯した可能性のある、連邦法違反によるすべての犯罪とされる。 共和党側はこの措置を非難。ドナルド・トランプ次期大統領は「司法の乱用と誤り」だとした。 ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は2日、バイデン氏が先週末、マサチューセッツ州ナンタケット島で家族と感謝祭の休暇を過ごしていた間に、今回の決断について「悩み苦しんだ」と記者団に話した。 バイデン氏が恩赦を出したのは、公式訪問でアフリカに向かう直前の1日夜だった。 ジャン=ピエール報道官は、アンゴラへ向かう大統領専用機エアフォース・ワンの中で記者団に、「(バイデン氏は)司法制度を信じている。だが、生々しい政治が司法プロセスにとりつき、誤審を招いたとも考えている」と述べた。 同報道官はまた、バイデン氏がハンター氏のことを、大統領の息子であるが故に「やり玉に挙げられた」と考えており、「(大統領の敵対勢力によって)狙われ続ける」と思っていると説明。 「だから大統領はこの行動を取った」とした。同報道官はつい先月まで記者団に、バイデン氏が息子に恩赦を与えることはないと話していた。 ハンター氏は今年6月にデラウェア州の連邦裁判所の陪審によって、拳銃を購入した際に薬物使用をめぐって虚偽の申告をしたとして、罪状3件について有罪とされた。現職の米大統領の子どもが刑事裁判で有罪評決を受けたのは初めてだった。 ハンター氏はまた9月には、連邦税法上の罪状についても有罪を認めた。税金の申告や納付を怠ったほか、脱税や虚偽の還付申告をしたとされた。 恩赦の対象は、2014年1月から2024年12月までにハンター氏が犯した可能性のある連邦法違反の犯罪すべて。この期間は、税金や銃に絡む犯罪があった時期を超えるものだ。 期間の始まりは、ハンター氏がウクライナのエネルギー企業ブリスマの取締役に就任した年となっている。当時、バイデン氏は副大統領で、アメリカの対ウクライナ政策で重要な役割を担っていた。 今年夏に公表された議会の調査は、バイデン氏について、息子のビジネス取引への関与を否定してうそをついたと非難した。ただ、バイデン氏の弾劾をもくろんだ共和党議員らの動きは失敗に終わった。バイデン氏は不正行為を否定している。 ハンター氏の二つの事件を担当したデイヴィッド・ワイス特別検察官は、家柄を理由にハンター氏が特別に捜査の対象になったという見方を真っ向から否定した。 ワイス氏のチームは2日に裁判所に提出した文書で、「この事件においては、執念に燃えた訴追や、選択的な訴追があったという証拠は一切なかった」と書いている。 大統領の妻のジル・バイデン氏は2日、ホワイトハウスで、「もちろん私は息子の恩赦を支持する」と話した。 バイデン氏の今回の決定は、トランプ氏や共和党上層部の激しい反発を呼んだ。いずれも、これまでバイデン政権のことをずっと、敵対勢力に対して司法省を「武器化」していると非難してきた人々だ。 マイク・ジョンソン下院議長は、「私たちの司法制度に対する信頼は、バイデン家とその乱用によって、ほぼ回復不能なほど損なわれている」と述べた。 下院監視委員会のジェイムズ・コーマー委員長も、バイデン氏が「最初から最後まで、家族の腐敗した影響力の行商についてうそをついていた」と非難した。 ■民主党議員からは批判と擁護 民主党側からの批判は、これらよりは穏やかだった。同党の議員らは常々、トランプ氏が法の支配を無視していると非難してきた。 マイケル・ベネット上院議員(コロラド州)は、「バイデン大統領の決定は、職責よりも個人の利害を優先させたもので、司法制度が誰にとっても公正で平等だという米国民の信頼をさらに損なうものだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。 グレッグ・スタントン下院議員(アリゾナ州)も、事件が不公正だというバイデン氏の主張は受け入れられないとして、こう述べた。 「政治的動機に基づいた起訴ではなかった」、「ハンターは重罪を犯し、陪審員たちによって有罪評決を受けたのだ」。 一方、バイデン氏を擁護する人もいた。 元弁護士のジャスミン・クロケット下院議員(民主党、テキサス州)は、ハンター氏の事件のような訴追案件を他に見つけ出すのは、全国でも「難しい」だろうとBBCの番組で話した。 「はっきりさせておきたいが、父親であり大統領である人物は、息子にとって正しいことをしただけでなく、私からみて間違っていると思われることを基本的に正すために正しいことをしたのだ」 元連邦検事のニーマ・ラマニ氏は、バイデン氏が米国民を欺いたとの見方をBBCに示した。 「バイデン大統領は息子に恩赦を与えないと言ったときから、ずっと不誠実だった」、「恩赦は当初から計画していたが、バイデン大統領は米国民を欺いた。彼と、その後にカマラ・ハリスが、大統領選の真っただ中にいたからだ」。 ラマニ氏によると、トランプ氏は来年1月に大統領に就任しても、前任者の恩赦を取り消すことはできないという。 大統領の恩赦の権限は 「絶対的」だと同氏は言い、こう付け加えた。 「ドナルド・トランプも共和党も、これを止めることはできない」 (英語記事 White House defends pardon of Hunter Biden amid backlash)
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