子ども時代の給食の「完食指導」が原因で…人前で食事をするのが怖い「会食恐怖症」当事者が語るリアル
焦れば焦るほどのどを通らなくなり吐き気も…
会食を苦痛に感じる人たちがいる。人前で、あるいは人と一緒に食事をすると不安や緊張が高まり、吐き気や胃痛、嚥下障害などが起きる「会食恐怖症」――。 【画像】おかずが少なすぎる! 大阪市の小学校給食が「あまりにショボすぎる背景」とは? 当事者の多くが発症のきっかけとして挙げるのが、学校給食や部活動での「残さず食べる」ことを強要する「完食指導」だ。関西に住む病院勤務の中西知典さん(48)も、小学校の完食指導をきっかけに会食恐怖症を発症した一人。 中西さんは小学1、2年の時の「残さず全部食べなさい」というクラス担任の指導にプレッシャーを感じ、給食の時間が苦痛になった。もともと小食ではあったが、好き嫌いは特になかった。 「先生の『残したらだめ』の一言が、僕には強迫のように感じられました。 追い詰められている気がして、給食の時間内に食べなければと焦れば焦るほど、のどを通らなくなる。結局、食べ切れないから、全部食べ終わるまで居残りさせられる。その姿を同級生に注目されるのも、『なんで食べられへんの?』と聞かれるのもすごく嫌でした」(中西さん、以下同) 食べられないのは、偏食があるからでも給食がおいしくないからでもない。それを周りにわかってもらえないことがつらかった。 高学年になると、風邪を引いてのどが痛いなどと理由をつけては、給食の量を減らしてもらった。 「中学と高校は弁当で、残しても周りに何か言われるわけではないので、困ることはなかったです。でも、休みの日に友だちと遊びに行って、一緒に食事をする時はしんどい思いをしました。 みんなと歩調を合わせようと同じメニューを注文するものの、小学校の給食指導の記憶から、みんなと同じ時間に食べ終えないといけないという強迫観念に駆られてしまう。食べ遅れて注目されることへの恐怖心で、気持ち悪くなってくるんです。 実際に人前で吐いたことはありません。でも食事中はずっと、吐いたらどうしようという不安が続きます」 「この症状を何とか治したい」と思い、高校時代に心療内科に通った。パニック障害と診断され、薬を服用。だが症状は改善せず、大学生活でも悩みは続いた。 「コンパがつらかったです。居酒屋での飲み会だと、あまり食べなくても気づかれないから割と楽なんですけど、一人一皿の食事会は結構きついものがありました。振り返ると、誘いの半分は断っていた気がします」