子ども時代の給食の「完食指導」が原因で…人前で食事をするのが怖い「会食恐怖症」当事者が語るリアル
「食事」が原因で転職を経験…
大学卒業後に物流関係の会社に就職するも、「食事」が原因で転職を経験。 「長期出張がメインの会社で、出張中はチームを組んで行動するので、仕事だけでなく食事も毎回、会社の人と一緒なんです。1年もたず、その会社を辞めました」 中西さんは、自分が「会食恐怖症」であることを3年ほど前に自覚した。ネットで「日本会食恐怖症克服支援協会」が発信する情報に触れたことがきっかけだった。 同協会のサイトでは、会食恐怖症を次のように説明している。 社交不安障害の一つ。会食の際やその場面を想像するだけでも強い緊張や不安を感じ、その不安を避けようとすることで仕事や友人関係、恋愛など社会生活に支障が出る状態が半年以上続く――。 発症から40年経った現在、中西さんは「症状が出る時もあれば、出ない時もある」状態で、その繰り返しだという。 「僕の場合は、会食の予定が決まると、その日が近づくにつれてだんだん体調が悪くなります。当日はたいてい、最悪の状態で会食に臨むことになってしまうんです。 ただ、コンディションが悪くても、会食後にはいつも『逃げずに行ってよかった』と思う。だから、なるべく誘いを断らないようにしています」 会食恐怖症を克服するには至っていないが、中西さんには「つらい状況を乗り越えてきた」という実感はある。 「これまで僕は『克服イコール普通に食事ができる』という考えに縛られていましたが、同じ症状の方からいろんな体験を聞くうちに、克服の形は人それぞれじゃないかなと思うようになった。今は会食恐怖症の自分を受け入れ、うまくつき合っていこうと思っています」 ◆「同じ悩みを抱える人がこんないにいるんだと驚きました」 中西さんが会食恐怖症を知るきっかけにもなった「日本会食恐怖症克服支援協会」。その代表である山口健太さん(30)も会食恐怖症の経験者だ。 山口さんの場合は学校給食ではなく、高校時代に所属していた野球部の指導が引き金となった。 「部活のトレーニングの一つに『食トレ』というものがあり、合宿では朝と昼に白米を2合ずつ、夜に3合食べることになっていました。最初の合宿で私はご飯を食べ切れなくて、部員みんなの前で監督から『なぜ食わなかったんだ』と責められたんです。それを機に、食事の場面を想像しただけで吐き気がするなどの症状が現れるようになりました」(山口さん、以下同) だが、大学時代に改善の糸口をつかむ。 「大学生の時のバイト先が飲食店で、仕事が終わった後にお店の人がまかないを作ってくれていたんです。でも私だけがぜんぜん食べられず、みんなで食事をするその時間がとにかく苦痛でした。それで思い切ってお店の人に相談してみると、『無理しなくていいよ。食べられる分だけ食べな』と言ってくれたんです。 食べられないことを理解してもらえたような気がしました。お店の人の一言でかなり気持ちが楽になって、食べられる量が徐々に増えていった感じです」 症状がだいぶ改善された頃、SNSで自分と同じ悩みを抱える人の投稿を見つけた。本やネットで調べ、会食恐怖症という精神的な疾患があることを知る。