石巻の新しい生態系。もやもや女子が描く「おもしろい町」
「仲が良いよそ者」の立ち位置
渡邊さんにとって石巻は成長する機会をもらった場所だ。「最初は地元の人に近づこうとか、頑張っていた部分はあったかもしれない。でも今は、よそ者としてどう関わっていくかが大事だと思っています」。地元の人と結婚してからも、大きく変わったことはない。「私は外から来た人と、地元の人の間、つなぎの立ち位置かな。仲が良いよそ者って感じ」。新しいことを興す時、調整が必要になったら発言できるような存在でいたい。あえて地元の人に寄り添いすぎないことも大事だ、と考えている。 「石巻をどうにかしたいというよりも、今、目の前にいる一人ひとりがなにを成し遂げていくのかに興味があるんです」渡邊さんはいう。 移住してきた若い人がお店を出したり、NPOを設立したり、アパレルで起業して夢中になってがんばっている姿を見て、地元の若者も希望を感じて巻組で働いたり、活動に加わってくるようになった。「若い人たちが会社をたてて新しい事業を始めることは、震災前には考えられなかった。居場所ができて、視野も広がったし、視点も変わったと彼らはいいます」。若い人たちが動く。そのことが町を変え、地域に何らかの「価値」を足していくと考えている。
思い描いた理想。石巻に熱気が渦巻く生態系ができること
会社を興してからも、壁にぶつかることがある。 「基本的に、よそ者、若者、大企業じゃない、肩書き無い、女の子と、完全に分が悪い」と苦笑しながら、「でも、ずっと町に滞在して、話をして、そこで初めて認められる部分もある。うまくいかないのは自分の力不足もあると思います」 震災後、町を動かす人や世代は多様化した。お互いが支えあい、いいコミュニケーションが生まれる状態になってほしい。それが実現すれば、下の世代が上の世代に引き上げられるのではないか。渡邊さんはそのイメージを「ひっぱりあげてくれるようなコミュニティ」と表現する。 「コミュニティというと、よくわからないけれど、生態系みたいなものかな」と笑う。やる気がある人が100人住めるような場所をつくり、そこに暮らす人たちが軸になってコミュニティができ、新しい事業が生まれていく、そんなイメージ。そういう生態系を作ることができる地域は他にあまりないと思っている。「悶々としていた学生だった私のキャリアや経験は、ほとんど石巻でスタートしています。石巻って、そういう力のある町なんでしょうね」。