石巻の新しい生態系。もやもや女子が描く「おもしろい町」
やりたいことがなかったからこそ見つけられた
「やりたいことはなんですか?と聞かれることがすごく困る」と渡邊さんはいう。「これっていうものがあったら、石巻を離れていたかもしれない」とも。すごい特技がある訳じゃない、集中力がある訳でもない、どちらかというと、ふわふわと回りながら考えて生きていきたい自分がある。ここに集まってくる人は、自分とは違うとも思う。「建築、ものづくり、写真・・・好きなものに集中してがんばっている人がすごくいっぱいいて。夢中になって没頭しているような人のそばにいて、それをつなげていくと、すごくたのしい。自分もできた気分になれるんです」 自分の役割について、「そういう人を支えたり、社会にどう還元できるかを考えたりしてプロジェクト化すること」だと整理する。「与えられたというか、自分から探して得たものではあるけれど、社会の大きな流れの中で需要と供給が発生している部分に自然に自分がいて、その課題にひたすら対応し続けている感じです」。 起業支援や人材育成を行うのは、そこに暮らす人が地域の雰囲気や魅力をつくると考えているからだ。「地域の資源に価値を見出して、発信して、ビジネス化していく人が必要。そのような人さえいれば、どんなものでも資源になるのではないでしょうか」と話す。 たとえば、店舗のロゴやチラシなどを通じて、デザイナーを町とつなげることもした。 「人がぐるぐる動いて回っていると、やりたい人とやって欲しい人が渦巻いてきて、また需要と供給につながる。やりたいことがある人が集まってきてくれることが、私が続けられる原動力になっています」 そう思えるまで、悩んだという。どこまでやるのか、続けるべきか、やめるのか。そもそも石巻じゃないのでは、とまで考えた。色々な人に相談をしているうちに、人がわーっとたくさんいるイメージがわいた。 「100人が没頭して夢中になっている町って、おもしろいんじゃないかな」 シェアハウスを始めて2年たち、現在は19軒に30人。その中には起業した人もいる。5年やっていれば100人に達するだろうと思っている。100という漠然とした目標を超えたとき、意味や意義、自分の存在価値、なにか自分ができることが見つかるかもしれない。