年末年始に観たい!心があたたまる配信オンリーの良作『スイートハーツ』『イベリン 彼が生きた証』ほか5選
各種配信サービスの独占配信作品の中から、2024年に配信されたおすすめの良作をピックアップ。家族との愛、友情や人との絆や繋がりを描く5作品を紹介する。 【画像全17枚】 マイ・オールド・アス~2人のワタシ~ <あらすじ> 大学進学のため地元を離れることが決まっているエリオット。プライベートも充実しており、順風満帆。だが、18歳の誕生日の記念にと、友人とともに幻覚作用のあるキノコでトリップしたら、39歳の自分が目の前に現れた!? 未来の自分=「マイ・オールド・アス」からのアドバイスで家族のことや自分自身、そしてこれから愛するようになる人のことを考えはじめたエリオットは、これまで見えていなかった大切なものに気づきはじめる…。 俳優で歌手のミーガン・パークが『フォールアウト』(2021)に続き監督を務めた青春ヒューマンドラマ。「未来の自分が助言しにやって来る」というよくあるSF的な設定ながら、人生の岐路に立つZ世代の選択を後押しするような優しさに溢れている。 物語の舞台となっているのはカナダのオンタリオ州、マスコーカ湖周辺。自然にあふれたロケーションも物語のおおらかさに一役買っている(ちなみに、監督が幼少期に実際にキャンプで訪れた場所でもあるそうだ)。 主人公・エリオットを演じるのはドラマ「ナッシュビル」などに出演するカナダ出身の新星メイジー・ステラ。39歳のエリオットを実力派のオーブリー・プラザが演じている。2人のユニークな掛け合いにも注目してほしい。 Amazon Original『マイ・オールド・アス~2人のワタシ~』はPrime Videoにて独占配信中。 イベリン 彼が生きた証 <あらすじ> 幼いころから難病を患い、車椅子生活を送るマッツ。両親は、成長するにつれ引きこもりがちになっていく息子を心配していた。だが25歳で彼が亡くなったあと、パソコンに残されていたのは、オンラインゲームの中で“イベリン”と名乗り生きてきた彼の広い世界と、そこで繋がっていた友人たちとの深い絆だった。 再構築されたゲームの映像と家族の回想、友人らの証言で“イベリン”の足跡をたどっていく…。 2024年のサンダンス映画祭で世界ドキュメンタリー監督賞と観客賞を受賞し、各国の映画祭でも高い評価を得たノルウェーのドキュメンタリー。「ワールド・オブ・ウォークラフト」というオンラインRPGの中で“イベリン”は多くのメンバーと友情を築き、恋をし、冒険に繰り出していた。時にうまくいかない親子の仲を取り持つなど、持ち前の心配りを発揮し、多くの人の心の支えとなっていたことも分かってくる。 両親は当初「難病の息子」の人生を嘆いて何度も後悔を語るのだが、息子の知られざる一面を知り、次第に晴れやかな表情になっていくのが印象的。オンライン上の関係を訝しんだり、軽視する人もいるだろうが、「オンライン」での友情も、「現実」の友情には変わりない。その「善」の部分は確かにあるのだと信じさせてくれる作品だ。多くの人に愛された"イベリン”の生涯に、きっと誰もが心打たれることだろう。 監督はこれまた傑作ドキュメンタリーである『画家と泥棒』のベンジャミン・リー。 『イベリン 君が生きた証』はNetflixにて独占配信中。 いつか笑いあえるなら <あらすじ> 甘えたい盛りの小さな息子と、思春期で反抗的な娘を持つ母親のステラ。家族のためにと必死になるものの、夫との生活はすれ違ってばかりでついに離婚を切り出される。だがステラは娘のポールダンスの大会に家族で行くことを決め、崩壊寸前の一家は旅の過程で再び心を通わせることができるのか…? 家族に無関心だった夫が旅を通して「父親」となっていく展開や、家とは違う非日常に置かれた夫婦が語り合うことで次第に距離を縮めていくなど、ロードムービー的な設定で家族の再生を描くスウェーデンのヒューマンドラマ。 目新しい要素があるわけではないが、随所にはっとするセリフが差し込まれていて、子育てや家族の関係に悩む親世代は胸に刺さる一作ではないだろうか。 主人公を演じるジョセフィン・ボルネブッシュが監督・脚本を兼任。一筋縄ではいかなくとも、愛を持って前へと進んでいく家族のドラマを作り上げた。 本作に限らず、2023年に配信された姉妹のドラマ『ありがとう、ごめんね』など、年末の時期に配信されるNetflixのスウェーデン作品は良作が揃っている。 『いつか笑いあえるなら』はNetflixにて独占配信中。 スイートハーツ <あらすじ> 同じ大学に通うジェイミーとベンは中学時代からの親友同士。お互いに恋人を地元に残して遠距離恋愛をしているが、最近どうもうまくいかない。高校卒業とともに別れるべきだったのか?と悩んだ末、2人は地元に帰った際に恋人と別れることを決意する。 一方、パリでクィアライフを満喫(?)しているもう一人の親友パーマーはゲイであることをカミングアウトする計画を立てていて…。 欧米(特にアメリカ)のラブコメディではよく、地元から離れた大学に進学する時に、いま付き合っている恋人と別れるかどうか?という問題がしばしばテーマとして浮上する。本作もその類型なのだが、珍しいのは男女の親友の関係がそこに絡んでくるという点だ。クライマックスに向けた『恋人たちの予感』(1989)の出し方もまた巧妙で、若者の恋と友情を現代的な視点で描いた青春ラブコメディとなっている。 キーナン・シプカとニコ・ヒラガのフレッシュなケミストリーも必見。また終始クィアフレンドリーな雰囲気も観ていて心地よい。 監督はジェイミー・リー・カーティスとリンジー・ローハンが心と体が入れ替わる親子役で出演したコメディ『フォーチュン・クッキー(Freaky Friday)』続編の脚本を手掛けるジョーダン・ワイス。 『スイートハーツ』はU-NEXTにて独占配信中。 キャドー湖の失踪 <あらすじ> 湖のほとりで暮らす8歳の少女アンナが突如失踪する。彼女の義理の姉であるエリーはその行方を必死に探していた。一方、母を亡くし傷心のパリスは原因不明の頭痛に悩まされていた。そんなある日、湖でなぜか母の形見であるネックレスと同じものを見つけ、湖に何か秘密があるのではないかと考えはじめるが…。 ニューヨークの廃地下鉄で生活する母娘の過酷な暮らしと絆を描いた『きっと地上には満天の星』のローガン・ジョージ&セリーヌ・ヘルドが監督・脚本を務めたSFスリラー。プロデューサーにM.ナイト・シャラマンが名を連ねている。 湖の謎と母親の死の真相を探る主人公・パリスを演じるのは『メイズ・ランナー』シリーズのディラン・オブライエン。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『ベイビーティース』などのエリザ・スカンレンが、ボートを乗りこなし義理の妹を探すもう一人の主人公・エリーを演じている。 核心に迫らない程度に解説をすると、本作は実はタイムループものである。条件がそろうことでその現象が起きる、という設定なのだが…これ以上はネタバレ厳禁! 前半に散りばめられた違和感=伏線が、後半一気に回収される頃には点と点が繋がり、思いもよらない感動を呼び起こすことだろう。 できれば前情報なしで観てほしい、大満足の一作。 『キャドー湖の失踪』はU-NEXTにて独占配信中。
シネマカフェ 深山名生