「ヒズボラ首長、バンカーに現金5億ドル」イスラエル、資金源の断絶へ
イスラエル国防軍がレバノンの親イラン武装組織ヒズボラの資金源断絶に動いた。これまでヒズボラの武器庫や情報施設など軍事拠点を焦土化することに集中していたが、今後は資金源を断ってヒズボラ組織の存立や再建を阻止する戦略だ。 【写真】レバノンのヒズボラ指導者ハッサン・ナスララ師 21日(現地時間)、シリア国営SANA通信によると、イスラエル国防軍はこの日シリアの首都ダマスカスのマッジ地区のある民間の車両を誘導ミサイルで攻撃した。この空爆でヒズボラ幹部1人を含めて2人が亡くなり3人が負傷した。近隣のホテル建物も一部破損したとAFP通信は伝えた。 この日、イスラエル国防軍のダニエル・ハガリ首席報道官は会見を通じてシリア空爆の事実を確認した。ハガリ氏は、死亡したヒズボラ幹部が財政部署の責任者だったと明らかにした。この幹部はイランが渡した資金を受け取ってヒズボラに送っていた。この日爆撃を受けたマッジ地区はシリア保安機関本部のあるところで、各国大使館などが密集している。イスラエル国防軍は今年4月、ここにあるイラン大使館領事部の建物を空爆し、イラン革命防衛隊(IRGC)コッズ部隊モハメド・レザ・ザヘディ司令官ら高位指揮官を殺害するなど、繰り返し一帯を爆撃している。 8日にはマッジ地区のある住宅商店複合建物が爆撃されて少なくとも7人の民間人が亡くなった。当時シリア人権監視団(SOHR)はこの建物でIRGCの高位幹部がしばしば出入りし、空爆死亡者のうち数人はシリア国籍者ではなかったと主張した。 ◇「ヒズボラ首長が使っていた地下壕に5億ドル(約756億円)」 あわせてイスラエル国防軍は、この日レバノンの首都ベイルート南部のダーヒエ地域のアルサヘル病院の地下に巨額のヒズボラ資金が保管されたバンカーがあると公開した。このバンカーはヒズボラの首長ハッサン・ナスララ師が7月イスラエル国防軍に殺害される前まで緊急避難所として使用していた場所で、ヒズボラがレバノン市民から奪った資金を保管する施設として使われていると主張した。 ハガリ氏は会見を通じて「この病院団地を数年間監視してきた」とし「バンカーの中には金や現金5億ドルがある」と話した。続いて「今後ベイルート・ダーヒエを含めてレバノン全域のヒズボラ目標物を打撃する」と強調した。 これに先立ち、イスラエル国防軍は20日、レバノン各地にあるヒズボラと連携している金融機関アルカルド・アルハサン(AQAH)関連施設30カ所余りを空爆し、本格的にヒズボラ資金源断絶に入った。イスラエル国防軍のヘルジ・ハレヴィ参謀総長は「今回の空爆はイランに対する対応であり、われわれの標的はイランが資金を支援して武器を送る場所」と話した。 ◇米国、イスラエルに休戦圧迫…専門家「通用しない」 一方、米国は中東の緊張を和らげるために総力を挙げている。ジョー・バイデン大統領の中東特使であるホワイトハウスのエイモス・ホクスタイン上級顧問は21日、レバノンを訪問して「米国はイスラエルとヒズボラ間の衝突をできるだけ早く終わらせたいと思っており、これはバイデン大統領の願い」としながら「レバノン・イスラエルと協力して葛藤を一気に終息させる方案を用意している」と話した。 トニー・ブリンケン国務長官も同日イスラエルを含む中東訪問の途に就いた。ブリンケン国務長官の中東歴訪は昨年10月7日ガザ戦争が触発されて以降、11回目となる。ブリンケン国務長官はパレスチナ武装組織のヤヒヤ・シンワル氏の死亡を契機にガザ地区の戦争終息と人質の釈放交渉を再開するようにイスラエルを圧迫するものと予想される。 ただし、レームダックに直面したバイデン政府の圧迫がイスラエルに受け入れられるかは未知数だ。米シンクタンク「カーネギー国際平和基金会」のアーロン・デイビッド・ミラー上級研究員はワシントン・ポスト(WP)に対し、バイデン政府が大統領選挙直前に有権者の心を不安にさせるような政策提案を敬遠していて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相もこの点をよく知っていると指摘した。中東イシューは民主党大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領にやや不利に作用している。