木村多江と貫地谷しほりが母娘に 「多江さんは誰に対してもウエルカム」
湊かなえの連作短編集から「夢の国」「光の航路」を映画化した「望郷」(公開中)。貫地谷しほりと大東駿介がダブル主演を務めた。かつては同じ島の学校に通った二人が再会し、2組の親子の過去といまが描かれている。全編、因島(いんのしま)を中心とした瀬戸内地方で撮影された映像は、憂いを秘めながらもノスタルジックで美しい。「夢の国」で幸せとは遠い場所にいる母娘を演じた木村多江と貫地谷。スクリーンの外では「多江さん」「しほりちゃん」と呼び合う仲睦まじい二人の見た島の景色は? それぞれの家族への思いや子供時代はどんな様子だったのだろうか?
収穫好きな木村 「あそこでレモンが獲りたくて」欲望を抑えるのが大変だった
― 島が舞台ですが、お二人とも東京のご出身ですね。自然の多いところは好きですか? 貫地谷:すごく好きです。休みがあると神奈川方面へ海を見に行ったり、のどかに過ごしています。鎌倉でおそばを食べて、そのまま山の上にある陶芸教室へ行ったりも。 木村:私は、収穫が好きなんですよ。たとえば、これからなら栗。休みが取れそうにないので栗拾いに行けるか心配なんですけど。春は、たけのこ堀りに3回ぐらい行って、1カ月はわが家の食卓がたけのこづくしになります。 貫地谷:旬のものを、ちゃんと取り入れているんですね。 木村:一心不乱に掘ること自体、好きですね。今回、因島でレモン農家に行ったんですけど、とてもきれいだった。あそこでレモンを獲りたくて、その欲望を抑えるのが大変でした(笑)。 貫地谷:レモン収穫するシーンは、なかったですもんね(笑)。私はイチゴ狩りぐらいしか経験がないので、栗やたけのこも獲ってみたいです。 木村:今度、誘うよ(笑)。
「父親から、お前はママのコピーだなっていわれる」貫地谷
― 演じる中で、幼少のころのお母様や家族の想い出がよみがえったことは? 貫地谷:この映画ほどには縛られていなかったのですが、親に叱られるたび、これはしちゃいけないんだ、あれはしちゃいけないんだ、と思ってはいましたね。親は絶対ダメって言うものだと勝手に思い込んで、自分で自分を縛って不自由になって、嘘をつくことを覚えて。そういう思春期でした(笑)。東京出身だけど、それでもやっぱり自分が生きづらい状況を自分で作ってしまうことはあったので、どこへ行ってもこういうことはあるなあと思います。 ― どちらかというと優等生? 貫地谷:そんなことはないです、忘れ物が多くて先生に怒られたりとか(笑)。お母さんは三者面談で初めてそれを知って、家に帰ったらすごい怒られるという、割とわかりやすい感じの子どもでした。 木村:私はこの作品のように我慢して我慢して子どもに当たるっていうことはなくて、もうちょっとストレートに、ダメだったらダメ、あ、それいいよって、わかりやすくやってきていますね。だから、どちらかというと自分が子どものときに母がどうだったかとか、そういう方向で考えて役を作っていきました。 貫地谷:私は父親に、「お前は本当にママのコピーだな」って言われるんです。どんどんそうなっていってる。 木村:うん、なっていくよね。親に似ていく(笑)。 貫地谷:きっともし私に子どもができたら、母親と同じようなことを無意識にするのかなって。 木村:それはある、してる。子どものころ、親から言われてすごく嫌だったことを、自分が子どもに言ったりするんですよね。嫌だって思ってたはずなのに。今回の作品にも、そういうところがあって。おばあちゃんにされて嫌なことを、娘にしてしまうとか。