コロンビアで国際同性結婚をした僧侶 LGBTQの課題を明るく伝える手本に
「結婚」に対して強迫観念のような風潮を感じていた
西村:私は……、結婚に対してはあまり良い印象を抱いていませんでした。というのも、日本では「結婚していないと人としての価値がない」とか「早く結婚しなければいけない」といった、強迫観念のような風潮を感じていたからです。 結婚をすると、指輪の交換をする人は多いですよね。結婚の象徴の一つが指輪ならば、いっそのこと自分で買ってしまおう。パートナーはいなくてもいい。自分は1人で自由に生きていこう。そう決意して自ら指輪を購入したのですが、その後でフアンと出会いました。 西村さんとフアンさんは、東京都港区のパートナーシップ制度「みなとマリアージュ制度」によってパートナーシップが認められたそうですね。 西村:「みなとマリアージュ制度」は、性的指向・ 性自認を理由に、民法に基づく結婚ができないパートナー関係にある2人が結ぶ契約です。病院での付き添いや住宅への入居が可能になるなど、共同生活に関するものが認められますが、残念ながら日本に住むためのビザはおりないのです。 事実婚といった婚姻の形もあるなか、「結婚」を選択されたのはなぜでしょうか。その選択は、仕事や生活にも影響がありましたか。 西村:私たち2人がもし日本人同士だったなら、日本で暮らす上でビザは必要ありません。ですから、そこまで結婚にこだわる必要はなかったかもしれませんね。 グラフィックデザイナーをしているフアンはどこでも仕事ができますが、コロンビア人の彼が日本で暮らすにはビザが必要です。同性婚が認められていない日本では、彼に配偶者ビザはおりません。今取得している就業ビザでさえ申請のハードルは高く、道のりは容易ではありませんでした。 出会った時から抱いていた不安は、「国籍の違う私たちが一緒に過ごせる国は、どこにあるのだろうか?」ということ。同性婚が認められている国は複数ありますが、コロンビアもそのうちの一つ。コロンビアの国籍を持つフアンとコロンビアで同性婚をするのは、手続きの関係もあり、とてもスムーズな流れでした。これで仮に将来、同性婚を認めている英国やスペインなどで私が就労ビザを取得した場合、フアンには配偶者ビザがおりる(コロンビアにおける同性婚の証明書があるため)。その反対もしかりです。コロンビアで同性婚をしていれば、一緒に過ごせる国を見つけやすくなるわけです。 コロンビアでの国際同性結婚には、周囲はどのような反応でしたか。 西村:私とフアンの家族はみんな祝福してくれて、とてもうれしかったですね。フアンの両親とも気が合って、一緒に楽しく食事をしたり、買い物に出かけたりしています。国際同性結婚をして、メディアから声を掛けてもらい、取材の機会も増えました。近々では4月5日に、カップルの“なれそめ”をきっかけに、さまざまな人生の楽しみを語るテレビ番組『超多様性トークショー!なれそめ』(NHK)があります。