イーサリアム大型アップグレード「デンクン(Dencun)」とは? L1とL2の違い、EIP-4844など解説
少し俯瞰して見てみると、今回のアップグレードは、2022年11月にヴィタリック・ブテリン氏(イーサリアム考案者)が投稿したロードマップにおける2段階目(サージ)にあたることがわかり、かつて思い描いていた形とは異なる部分もありながら(5年前はL1をシンプルに保ちL2で複雑な内容を実装する方が良いと考えていたが、現在はL2を複雑化させすぎない方がよいと考えている旨の発言をしています)、実装が着々と進んでいる様子が伺えます。 本稿でデンクンのアップグレードに含まれる全ての内容を扱うことは難しいため、ここからはL1とL2の違いを簡単に解説した上で、今回のアップグレードで最も注目されているEIP-4844(イーサリアム改善提案4844)についてフォローしたいと思います(全てのアップグレード内容を確認されたい方はEIP-7569をご覧ください)。
●L1とL2(レイヤー1とレイヤー2)
L1(レイヤー1)はベースとなるブロックチェーン(イーサリアムやビットコイン)を指し、L2(レイヤー2)ブロックチェーン(イーサリアムに対するアービトラムワンやオプティミズム)の基盤となります。 ブロックチェーンには「ブロックチェーンのトリレンマ」と呼ばれる課題がありました。トリレンマとは、3つの要素のうち2つしか同時に満たすことができない状況を指します。下図のような三角形において一辺しか取ることができない状況である、と考えることで、イメージしやすくなるかもしれません。 ●ブロックチェーンのトリレンマ イーサリアムは分散化とセキュリティを重視してきたため、スケーラビリティ(1秒あたりに処理できるトランザクションの量)を犠牲にしていました(ノードが分散されているため同期に時間がかかり、セキュリティを重視するためトランザクションの検証に時間がかかります)。この状況を改善するために生まれたのがL2です。 L2はL1とは別のブロックチェーンであり、「ロールアップ」と呼ばれる技術によって、L2上で数百件のトランザクションを単一のトランザクションにまとめてからL1に送信します。そうすることで、L1のトランザクション手数料を各ユーザーで分配して負担でき、手数料が軽減されるとともに、L2上で高速なトランザクションを実現できるのです。セキュリティについては、トランザクションデータをL1に送信しているため、L1のセキュリティを継承することができるという仕組みです。 ロールアップには「オプティミスティック・ロールアップ(アービトラムやオプティミズムなど)」と「ゼロ知識ロールアップ(zkSyncなど)」の2種類があり、それぞれ一長一短となっています(前者は検証に時間がかかり、後者は検証するのが難しいという問題があります)。それぞれのロールアップの詳細は、冒頭で紹介した開発者向けドキュメントに詳しいので、さらに深掘りしたい方はご覧になってみてください。