イーサリアム大型アップグレード「デンクン(Dencun)」とは? L1とL2の違い、EIP-4844など解説
L2とスケーリングの関係は、秒間トランザクション数の推移を確認することで確かめられます。こちらの画像は、「L2beat」というサイトが公開しているデータです。 チャート下部の緑色の四角のうち、右から2番目がArbitrum Novaのローンチであり、アービトラムがイーサリアムのスケーリングの歴史の中で大きな転換点を担っていたことが伺えます。一番右の緑色の四角はzkSynk Eraの開始です。 画像右上にある「Scaling factor」は、L2の存在がイーサリアムのスケーリングに対してどれほど寄与しているかを示す指標で、「(L2の7日間トランザクション数 + イーサリアムの7日間トランザクション数) / イーサリアムの7日間トランザクション数」によって計算されます。非常にざっくりした理解としては、「L2があることで約8.93倍のトランザクションを処理できるようになっている」と認識して良いと考えます。 ●EIP-4844 EIP-4844が注目されている理由は、この提案によって「プロト・ダンクシャーディング」が実装されるためです。プロト・ダンクシャーディングが実装されると、L2におけるトランザクション手数料(ガス代)が今までの1/10になると言われており、より多くのユーザーや開発者がL2(イーサリアムの経済圏)に参入することが期待されています。 プロト・ダンクシャーディングは、名称に「プロト」とついていることからも察せられるように、「ダンクシャーディング」の前段階です。「シャーディング」は、イーサリアムのブロックチェーンを分割する技術であり、「ダンクシャーディング」では、イーサリアムのブロックに「ブロブ」と呼ばれるデータの一時記憶領域を追加することで、L2ロールアップ時の手数料を軽減します。ダンクシャーディングに到達するためには複数のプロトコルをアップグレードする必要があり、今回はその中継地点としてプロト・ダンクシャーディングが実装されます。 先述の通り、ロールアップとは、数百件のトランザクションをオフチェーンでまとめてからL1に送信する技術でした。送信されたデータに不正がないかを確認するために、コンセンサスクライアントはデータを一定期間確認できる必要があります。確認対象のデータがチェーン上に永久に残る場合、クライアントの容量は大きくなり、ノードの実行に必要なハードウェアも大量になります。確認対象のデータがブロブに保存され、1~3ヶ月は検証可能であることが担保された上で、自動的に削除されるようになると、データを保存しなければならない容量が軽減される、というのが、プロト・ダンクシャーディングが目指す内容なのです。 プロト・ダンクシャーディングの段階では、このブロブは1個だけですが、ダンクシャーディングでは64個まで拡張される見込みとなっており、まだまだ先の話ではありますが、更なるスケーリングが期待されます。 より詳しく探求されたい方には、EIP-4844に加え、ヴィタリクによるFAQなどもレファレンスとしてご紹介しておきます。