イーサリアム大型アップグレード「デンクン(Dencun)」とは? L1とL2の違い、EIP-4844など解説
●トランザクション手数料とL2のTVL
L2のトランザクション手数料が1/10になるとのことですが、現状はどの程度の水準なのでしょうか。growthepieのデータを参照すると各チェーンにおける手数料の中央値の推移を確認できます。 Arbitrum Oneの直近値(200.83K Gwei)を基準に考えると、1トランザクションあたり約0.0002ETH($0.73)程度であることがわかります。1/10になった場合、トランザクションあたり約$0.1を切り、個人にとって非常に決済しやすくなることが期待されます(ただし、ETH価格が高騰したらその分ドル建ての単価は上がります)。
選択したネットワークの一日あたりトランザクション手数料の合計も確認します。 選択したネットワークに限った累計ですが、一日あたり600ETHを超える日もあることが見て取れます。この累計手数料がどのように推移していくのか(参加者が増えることで1/10よりも多い水準で成長していく可能性が高いと考えています)は、デンクン後のL2の状況を把握する上で継続してモニタリングしておきたい指標の一つです。
最後に、L2全体のTVL(Total Value Locked)について確認します。DeFiに親しい方はTVLと聞いて「プロトコルにロックされている金額」を想起されると思いますが、L2beatにおけるValue Lockedでは、「チェーンに正規ブリッジされた資産 + ブリッジャーによりブリッジされた資産 + ネイティブに生成された資産(アービトラムにおけるARBやオプティミズムにおけるOPなど)」を合計しています。 3月6日時点のデータではアービトラムがTVL全体の43.8%程度を占めており、L2における影響力の大きさがわかります。また、DeFiLlamaのデータでプロトコル数を比較すると、イーサリアムにおけるDapps(プロトコル)が985件に対してアービトラムは559件と、L2として1位であることから、チェーン上に多くのサービスが存在することがTVLに寄与している状況が見えてきます。 (余談ですが、DeFiLlamaのTVLではプロトコル外のチェーン上の資産を集計していないためL2beatのTVLとは差が生じます。また、プロトコル数2位はバイナンススマートチェーンですが、L2ではないためL2の1位はアービトラムとなります) L2のTVLは順調に成長し続けており、デンクンによりトランザクション手数料が安くなることでL2への更なる資金流入が見込まれます。また、L2でトップを占めるアービトラムとオプティミズムのガス代はイーサリアムで支払われることから、これらのチェーンの発展はイーサリアム需要にも繋がっていくことが予想されます。 一方で、アービトラムやオプティミズムのガスがARBやOPに置き換わるようなことがあれば(実際にこのような提案は存在します)、L2における通貨需要はイーサリアムではなく各ネイティブトークンへ移っていくというケースも考えられます。 今回のレポートは以上となります。SBI VCトレードでは、各ディーラーが暗号資産のニューストピックをとりまとめた週間レポートを発行しています(あたらしい経済のサイトで読むことができます)。直近の暗号資産市場を振り返るのに最適ですので、ぜひご覧になってみてください。 ※ETHの日本語での正式名称は「イーサ」ですが、通称としてのわかりやすさを重視し、本稿では「イーサリアム」と表記しています。 このコラム/レポートについて 国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」を運営する、SBI VCトレード株式会社。この記事は、同社の市場オペレーション部 清水健登氏による寄稿コラム/レポート記事です。 <本記事について> 本記事は一般的な情報の提供のみを目的としたものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社による投資助言を目的としたものではありません。また株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社が暗号資産の価値を保証するものでもありません。暗号資産投資やステーキングにはリスクが伴います。投資やステーキングを行う際はリスクを了承の上、利用者ご自身の判断で行ってください。 <暗号資産を利用する際の注意点> 暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。/暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。/暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。/SBI VCトレード株式会社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。/SBI VCトレード株式会社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。/秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。/暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。