どうなる箱根駅伝?全日本大学駅伝で判明した優勝青学大と東海大、東洋大の差
東海大と東洋大の誤算とは?
「東海大、東洋大が本気を出してくれば、怖い存在です。東海大は關君、鬼塚君が道半ばというところでしょうし、100%の状態に上げてきたら強い。東洋大は2区西山君が不発でした。でも最後は3位まで戻してきたので、総合力はありますよ」 では、全日本で青学大に完勝を許した東海大と東洋大はどんな状態だったのか。 東海大は5000mと1万mの上位8人の平均タイムでは青学大を大きく上回っていたが、夏合宿で故障者が続出。 前回の箱根で1区と2区を担った三上嵩斗(4年)と阪口竜平(3年)がエントリーから漏れるなどベストメンバーを組むことができなかった。エース格の關颯人(3年)と鬼塚翔太(3年)も故障あがりで、本調子とはいえなかった。その中、2区の關でトップに立ち、3区館澤亨次(3年)が青学大との差を37秒まで広げている。 「正直、今回のメンバーで青学大と戦うのは厳しかったですね。でもチームとしては確実に上がっています。出雲は先頭争いに絡めませんでしたが、今回は第2中継所から第6中継所までトップで行けましたから。5区の鬼塚あたりで引き離すことができれば違った展開になっていたとは思うんですけど、現状では鬼塚も精一杯やりました。これからチーム全体で上げていくことが大切だと思います」(両角速駅伝監督) 阪口が練習に復帰するなど、足並みが整いつつある東海大。これまではスピードにこだわってきたが、今冬は記録会などのトラックレースには出場せず、二度の富津合宿などで走り込み、「箱根仕様」に仕上げていくという。正月にはどんな“進化”を見せるのか。 東洋大はレース前、酒井俊幸監督が「6区終了時で2分差ならチャンスはある」と話していたが、序盤で失速。7区山本修二(4年)、8区相澤晃(3年)という強力カードを生かすことができなかった。1区田上建(2年)は青学大と15秒差で滑り出すも、エース格の2区西山和弥(2年)が誤算だった。まさかの区間14位に沈み、早々と優勝争いから脱落した。 「西山のところですね。設定タイムが31分30秒だったので、1分40秒ほど悪かった。序盤で流れていければ、終盤は並走できたと思うんですけど……。4区浅井崚雅(2年)も設定より50秒くらい悪いですし、前半はパンチ力がなかったですね。出雲と全日本は青学大の前を一度も走っていないので、箱根では青学大の近くでレースができるように仕上げていきたいです」と酒井監督。 出雲駅伝の最終6区で区間賞を獲得した吉川洋次(2年)と、昨年の全日本2区で区間2位と好走した渡邉奏太(3年)を起用できなかったことも大きなマイナスだった。 ほぼベストメンバーを組むことができた青学大に対して、東海大と東洋大はコンディショニングがうまくいかなかった。その差がタイムとしても表れている。10区間の総力戦となる箱根駅伝ではどうなるのか。 5連覇を目指す青学大は、1区鈴木(区間5位)、2区森田(区間1位タイ)、4区梶谷(区間9位)、5区竹石尚人(区間5位)、6区小野田(区間1位)、7区林(区間1位/区間新)、10区橋間貴弥(区間2位)という前回のVメンバー7人に加えて、橋詰、ダブル吉田、出雲5区区間2位の生方敦也(3年)という新戦力も強力。さらに確立された“青山メソッド”を生かした「調整力」もずば抜けている。 東海大と東洋大は青学大という牙城をどう崩すのか。正月の晴れ舞台まで残り約2か月。箱根に向けたトレーニングに、勝つための戦略。水面下での熱い戦いが始まった。 (文責・酒井政人/スポーツライター)