「“ただドラマをやる人”で終わっちゃうと思った」朝ドラ出演の57歳俳優が芸人活動を再開したワケ
“ただドラマをやる人”で終わっちゃう
――俳優の田口さんだけを知っている方たちにも、「『8343』を観にきてほしい」みたいな思いはありますか? 田口:もちろん。舞台とかドラマを観てくれる人たちっていうのは、その作品のキャラクターで僕を知ってくれているわけじゃないですか。ただ、それは人が書いたセリフであって僕が発してる言葉ではないから、テンションでも何でも、どこかのタイミングで興味を持ってもらって相乗効果で知ってもらうのが一番嬉しいです。 だけど、一本道ではないから、いまいち浸透しにくかったりしますよね。山の頂上を目指すなら一本で行ったほうがいいけど、僕のやり方は何本もクネクネと回り道しながらでなかなか上がっていかない。ただ、そういうのも全部含めて僕なんですよね。やっとこの歳になって「このままでいいじゃん」って思えるようになりました。 だって、ドラマを見てる人たちは僕が嫌な役をやったら、ずーっと僕のことを「嫌なやつ」って思ったりするんですよ? 昔だと、「振られ役」「デブキャラ」「汗かいてる」みたいなイメージのまま。僕20年前ぐらいからずーっと体重は落としてるのに、いまだに「やせましたね」とかって言われるし(笑)。だから、シンプルに“普通の人間”になりたいんですよ。 ――地元・福岡に目を向けるようになったのも、そういうところが大きそうですね。 田口:若い頃は、「博多弁しゃべれるよ」みたいなことをちょっとでも自慢したくなかったんですよ。まったくイメージがないまま博多弁をポンっとネイティブにしゃべって、「うわ、博多の人だ!」って思われたほうが役者としては得じゃないですか。 でも、初めて『8343』のライブをやったときに、「ここであと何本やれるんだろう」と思って。仮に2年に1回の活動で70歳前までやると考えたら、あと十数本しか自分の表現できる回数が残ってないんですよね。 友だちも徐々に亡くなっていくし、俺が地元の仲間たちに恩返しできるとしたら、みんなを集めてお祭りみたいなものを開催することぐらいかなと。それをやらなかったら、“ただドラマをやる人”で終わっちゃうと思ったんです。僕自身、年齢的にも「軽く背中をポンっと押してくれるだけでやるよ」って心境になってるし、そうありたい。 だから、集まったときの打ち上げって僕にとっては非常に大事なんです。みんなで一つになって何かやった後に、「楽しかった」「面白かった」と確かめ合うことが生きてることを実感する瞬間だったりするので。