現代のバイクにおけるバッテリーの役目とは?【豊富な種類があるがオススメは?話題のリチウムは?】
バイク用バッテリーといえば、古くは液量のチェックや補充が必要だった「開放型」で、現在は密閉タイプの「MF型」が主流だが、この2つはどちらも『鉛バッテリー』と呼ばれるタイプ。そしていまどきはバイク用の『リチウムバッテリー』の存在も耳にするが、それぞれどんな違いがあるのだろう? 【画像】バッテリー解説イラストなどをギャラリーで見る(8枚) 文/Webikeプラス 小川 勤
充電と放電を同時に行う「特殊な使い方」
バイク用のバッテリーは別名で「スターターバッテリー」と呼ばれるように、一番の役目はエンジンを始動すること。具体的にはセルモーターを回す電気の供給だ。しかしエンジンがかかってからは、エンジンに装備された「ACG」がバイクに必要な電気を発電するのでバッテリーの役目は終了……というわけではない。 ACGが発電した交流の電気は直流に整流しつつ、さらに12ボルト(便宜的に12Vと言われているが、実際には13~14Vくらいが適切な充電電圧)に整圧してバッテリーを充電。そしてバッテリーに溜めた電気をバイクの電装系各部に供給している。バッテリーは、エンジンを始動した後も大切な仕事をこなしているのだ。 じつはここがバイク用バッテリーの特殊なポイント。たとえばスマートフォンは、充電しながら使用すると(充電と放電を同時に行うと)、端末や電池が発熱して電池の劣化を早める原因になるといわれ、使用する時は充電器から外すことが推奨されている。充電した電池を使うそのほかの電気・電子製品の多くも、充電しながら使用することはあまりない。 ところがバイク用バッテリーは充電しながら電気を各部に供給、すなわち充電と放電を同時に行っている。ある意味これは「特殊な使い方」で、鉛バッテリーでもリチウムバッテリーでも電池に対する負担がとても大きいのが事実だ。
バッテリーの電気は、バイクのどこに使われている?
バイクに絶対に必要な電気といえば点火プラグに火花を飛ばすための電気で、これがなければエンジンを回すことができない。また、ヘッドライトやテールランプ、ウインカー等の灯火を点灯・点滅させるにも電気が必要だ。 とはいえ昔のバイクは、ほぼこれだけで走ることができた。前述したようにエンジン始動のセルモーターにも電気は必要だが、1960年代頃までのバイクは「キックスターター」でエンジンをかけていたし、2ストロークエンジン車(250ccのレーサーレプリカやオフロード車など)は2000年代初頭に姿を消すまでキック始動が主流で、エンジン始動にバッテリーの重要度は低かった。 しかし80年代中頃から変化のきざしが見え始める。この当時に増加した水冷エンジン搭載車は、ラジエターに冷却用の電動ファンを装備したため、その電気が必要になった。この辺りからバイク用バッテリーの仕事はどんどん増えていくことになる。 その状況が大きく変わったのが、燃料供給がキャブレターから電子制御式燃料噴射(FI)に移行した時で、国産バイクなら2000年代初頭頃。キャブレターは物理現象によって単体で機能するため基本的に電気は不要だったが、FIはガソリンを圧送する電磁ポンプや吐出するためのインジェクター、そしてそれらをコントロールするためのECU(エンジン制御ユニット。いわゆるコンピューター)を稼働するための電気が必要になった。 この頃からABS(アンチロックブレーキシステム)装備車が増え、このユニットを稼働するための電気も必要になる。 さらに2010年頃からはFIのライド・バイ・ワイヤ(スロットルボディのバタフライバルブを電動モーターで駆動)や車体の姿勢を検知するIMU、電子制御サスペンションも続々登場し、これらの制御に必要な各種の情報を得るためのセンサー類の多くも電気で稼働する。 そして近年、多くのバイクのメーターがカラーTFTを採用。さらに前車を追従するACC(アダプティブクルーズコントロール)用のミリ波レーダーを装備するモデルも登場している。 ほかにもグリップヒーターやナビ、アクションカメラなど、純正パーツ以外の電気・電子ガジェットを装備するライダーも増えたため、バッテリーが供給すべき電気の量は、飛躍的に増えているのが実状だ。