「私は大丈夫」は通用しない 更地になった住宅に再来年まで作付けできなくなった田んぼ…夏の大雨被害の影響残る【秋田発】
毎年のように発生し、人々の生活や産業に影響を及ぼす“自然災害”。2024年も秋田県内は記録的大雨に見舞われた。7月の被害発生から約5カ月経過し、ハード面の復旧は進んでいるが、その爪痕は被災者の生活や心に今も色濃く残っている。 【画像】大雨被害から5カ月たった町の変化
記録的大雨に見舞われた町は今…
穏やかな新年の始まりが一変。1月1日に石川・能登地方を震源とする地震が発生し、最大震度7を観測した。秋田県内では最大で震度3の揺れを観測。最大30cmの津波が到達した。 7月には県の南部を中心に記録的大雨に見舞われ、13の河川が氾濫。多くの住宅や農地が水に漬かり、後に激甚災害に指定された。湯沢市では土砂崩れで作業員1人が行方不明になり、約1カ月後に遺体で発見された。にかほ市では住宅街を流れる琴浦川が氾濫し、橋には大量の流木が引っかかっていた。 あれから約5カ月がたち、川沿いの道路はガードレール下の隙間を埋めるようにびっしりと土のうが積まれていた。「川が再び氾濫するのではないか」と不安を抱く住民の要望を受け、市が設置した。 8月に被災地を訪れた際、床上浸水の被害を受けた住宅は、床下に大量の泥が入り込み、ボランティアなどの手を借りながら泥をかき出す作業に追われていた。今は再び床材が張られて修復は終わったが、日常生活を取り戻すまでに約2カ月を要したという。 にかほ市社会福祉協議会の齋藤正志さんは「元通り自分の家で過ごされている人もいるし、今回の大雨で引っ越しを余儀なくされた人もいる。今後はそうした人の生活支援が重要になってくるのではないか」と話す。にかほ市内で被害に遭った住宅は26件で、このうち半数が琴浦地区だった。中には「家を取り壊す」というつらい決断をした人もいた。
大雨被害の田んぼ 作付けは2年後か
大雨は基幹産業である農業にも大きな爪痕を残した。農林水産関係の被害額は185億円を超え、秋田県内の大雨被害としては過去最大となった。 8月に青々としたイネが大量の土砂で覆われていた由利本荘市の田んぼを11月に再び訪れてみた。田んぼの持ち主である齋藤颯さんは「イネは刈れていない、刈り取れなかったという状況。育っているけど、ここまで砂が入っていると機械も入れない」と説明してくれた。 齋藤さんは8月以降、田んぼに残る大きな木などを取り除いたものの、土砂が流れ込んだ部分の収穫は諦めなければならなかった。収穫量は例年の7~8割にとどまったという。 齋藤さんは「最初から最後まで本当に何が出てくるか分からないという状態で、夏に比べて穂も育ってきて余計に下が見えない状態なので、ゆっくりゆっくり刈っていったというのがことしの稲刈りだった。流木とか、歩道などに立っているポールなどが結構出てきて、1回機械を降りて、取って、また運転しての繰り返し。初めての経験だった」と稲刈りの様子を振り返る。 被害を受けた田んぼは国の支援を受けて整備し直す予定で、早ければ2025年春から土砂の撤去などが始まる。2025年の作付けは難しく、この田んぼでコメを作れるようになるのは2026年以降になるという。齋藤さんは「来年も何があるか分からないので、例年通りやるというのが一番。おいしいものを作って消費者に届けられれば一番良いかな」と話す。 一瞬にして日常を変えてしまう自然災害。「私は大丈夫」「この地域は大丈夫」といったこれまでの常識はもはや通用しない。いざという時にどうするかを考えることが、災害への備えにつながる。 (秋田テレビ)
秋田テレビ