インドネシア・ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」
今回の調印に至るまでの間、一体その裏側では何が起きていたのか。この数年来、L/A調印実現に向けてインドネシア政府、そして世界の開発ドナーとの調整に奔走してきたJICAインドネシア事務所長の安井毅裕氏にインタビュー取材を行った。東西線プロジェクトのこれまでとこれから、そして、そこから見えてきたものとは――。 ■抵抗勢力は「運輸省鉄道総局」 ――東西線のL/A調印、ようやく決まったかというのが正直な感想です。そして、現状の南北線と同様の実施体制で建設が決まり安心しました。大変長い交渉の時間を要したと思います。
安井:E/S借款が結ばれたのが2015年で、インドネシア側での予算承認が遅れたり、コンサルタントを選定するにあたっての調達委員会の設置が遅れたりということもあり、コンサルタントが決まったのが2020年だった。それで少し遅れてしまったというのがある。ただ、その後は比較的大きな遅れはなかった。実施体制を検討するところは検討していたが、それほど大きな遅れというわけではない。 ――実施体制は、コンサル契約が終わった後に決めるのですね。
安井:2020年くらいから始まった。東西線はDKIを出るので、州営企業であるMRTJ(ジャカルタ地下鉄公社)は今の法令だと州外の末端区間ができないということで、どういった体制が適当かということを決めるためのサポートも行ってきた。しかし、結局誰も決められないという状態が続いて、2023年後半くらいから、DKIのほうからMRTJにやらせたいという話が出てきた。 われわれも、いや個人的には、MRTJはJR東日本や東京メトロの知見が集約されているような事業体なので、そこがやってくれると非常にいいんじゃないかなという思いがあった。DKI知事代行のヘル氏はジョコ大統領に比較的近いという理解もあるので、知事代行の動きで一気に実施体制が固まるかなと。