センバツ中止”遅すぎた決断”の余波…高野連は各校へ「心のケア」通達も
”見えざる恐怖”に球児の夢が絶たれた。日本高等学校野球連盟は11日、大阪市内で「第92回選抜高校野球大会」の臨時運営委員会を開き、19日から甲子園で開催予定だった大会の中止を決定した。史上初の無観客での開催も模索していたが、選手の健康、安全を最優先として、一転、中止の決断をした。センバツは、過去に1942年から46年に戦争の影響で中断されていたが、中止は初めて。出場32校の選手や監督は無念さを押し殺すしかなく、高野連は各校に「選手の心のケアの実施」”お願い”を通達した。収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染拡大の現状を考慮すれば、中止は致し方ない決断だったが、期待を持たせての“遅すぎた決断”を疑問視する声も出ている。
直前まで無観客開催を模索
開催中止。春の風物詩だったセンバツがカレンダーから消えることになろうとは。8日後に迫った大会に向け、開催を前提に準備をしていた32校の選手、監督、関係者は、ショックの余り、やりきれない涙を流した。 高野連は3月4日に運営委員会と臨時理事会を開き、通常開催を断念。中止の可能性を残した上で、春夏の甲子園通じて史上初となる無観客での開催を前提に準備を進めることを各出場校に通達し、最終的に1週間後のこの日に結論を下すとしていた。 実は10日から11日にかけて高野連から各学校側へ連絡が入り、無観客になった場合での出場の意向を重ねて確認されていた。その作業が、何のために行われたのかは、わからないが、いっこうに新型コロナの感染拡大が収まる様子がなく、政府が引き続き、大型イベントの延期、中止の続行を要請している状況にもかかわらず、中止をほのめかす連絡がなかったため、出場校の一部は、「無観客での開催」を信じて疑わなかった。しかし、結論は、そんな流れとは相反するものだった。さらにショックに輪をかけるものになった。 昨年春夏ともベスト4に入り、今大会は優勝候補の一角に挙げられていた明石商ナインはラッシュ時を避け、この日、午後4時に練習を終え、帰宅の途へ。この時点では選手に中止の一報は届いておらず、狭間善徳監督は、「厳しい状況の中なので中止は致し方ない。選手たちには気持ちを切り替えて夏を目指すように伝えたい。1日でも早く、感染拡大が終息することを願う」とコメントした。 明石商と言えば、最速151キロ右腕の中森俊介投手と俊足強打の来田涼斗外野手(ともに2年)という今秋のドラフト候補が二枚看板。今大会最も注目を集めていたチームのひとつで初の日本一へ向け、ひたむきに練習に取り組んでいただけに無念の思いは募る。 高野連から学校側へ中止の連絡が入り「選手の心のケアをお願いします」との“お願い”が通達されたという。センバツ出場に向けて準備を進めていたが、明石商では、15日まで練習を休み、選手達に心身の休養を与える方針を固めた。