有村昆が2024年映画のワースト5を発表「ミステリーとしては凡庸な、いちばんつまらない結末」
三谷幸喜さんは脚本家として大好きなんですが…
●ワースト2位『スオミの話をしよう』 三谷幸喜さんは脚本家として大好きなんですよ。『古畑任三郎』は何回も観直してますし、大河ドラマの『新選組!』や『鎌倉殿の13人』も傑作で、本当に天才だと思ってます。 ただ映画監督としては、評価が分かれるところなんですよね。プロットやキャティングが非常に上手くまとまった作品もあれば、これは何がしたかったんだろうという作品もあって、どちらに転ぶかといった感じなんですか、今回はダメなほうでした。 これは違うなと思ったのは、舞台と映画の区別ができてないってこと。 三谷さんは舞台の脚本や演出をたくさん手掛けていて、名作をたくさん残している演劇人。それに、今回の映画はあえて舞台っぽく撮ったと公言しています。でも、結果的にそれになんの意味があったんだろうということですよね。 まず、セリフが舞台の間とテンションなので、ずっと違和感がある。それに舞台というのは、最初からステージが全部見えていて、そこで展開していくものですけど、この映画も豪華なお屋敷の中を登場人物がウロウロして、それをカメラが追いかけていく。でも、それだとやっぱりなんか退屈なんですよね。カメラの切り返しでパパっと繋いでくれたほうが、緊張感が出ると思うんです。 物語も、うーん…という感じでした。 長澤まさみさんが演じる、スオミというミステリアスな女性が失踪してしまう。そこでスオミの元夫たちが集まって、いろいろと話しあいながら、彼女は実際にはどういう女性だったのかという謎を解いていくわけです。 こういう主人公が不在で、まわりの証言で進んでいくお話は『桐島、部活辞めるってよ』とか、面白い作品がたくさんあります。『キサラギ』とかも、そのパターンですよね。 そこにミステリー要素があれば興味が深まってくるんですけど、本作はおじさんたちが集まって、ただごちゃごちゃと自分の話をしてるだけで、それぞれのつながりが薄いんです。 けっきょく、スオミという女性をこねくり回しすぎていて、結果的に魅力がないキャラクターになってしまっている。最後にスオミが出てきてもぜんぜん嬉しくないんですよ。オチもめちゃくちゃ弱くて、ミステリーとしては凡庸な、いちばんつまらない結末でした。 まさに、長澤まさみの無駄遣いですよね。これをやるならシャマランの『スプリット』くらいやってほしかったです。同じキャストで舞台でやれば面白かったかもしれないですけど、 映画としては完全に失敗作。最後のミュージカルも蛇足でしかなくて、なんだか寂しい気持ちになりました。