【内匠宏幸】岡田彰布が言いかけた近本光司の状態、三振目立つ1番打者の「結果」に注目
6月22日、敗戦後の阪神監督、岡田彰布は冗舌だった。バッテリーの不用意な配球、ミスが続いた守備、さらに公式記録員にまで言及した。その最後、誰も質問しないとなった時、「もうええんか? 近本のこととか…」と言い残し、その場を離れた。 【写真】近本をあたたかく抱きしめる岡田監督 近本のこと? 岡田は何かを言いたかったのだろう。でも1試合3三振に終わっていた1番打者に関する問いかけがなかったことで、このような取材の終わり方になったようだ。 敗れたといえ、明るい兆しはあった。何より4番が戻ってきたこと。久しぶりの大山の本塁打に甲子園は沸いた。だが、気になるのがやはり近本のことだった。 24日付のスポーツ新聞。打撃成績表を確認する。近本の成績はやはり不本意な数字が並ぶ。その中の三振数。近本は三振の少ないバッターというイメージが強くあった。プロ1年目は110個を記録している。それが2年目以降、数を半減させ、昨年は71個。それでも多いという印象だが、今季はシーズンの半分もきてない時点で45三振。まだイメージ通りのバッティングに至っていないようだ。 バットコントロール、ミート力、ボールの見極め力といったところで近本はリーグでトップクラスにいると思う。同様の打者がDeNAの宮崎で、彼は今年も三振しないバッター。ここまで喫した三振は13個。能力が互角と思う近本と宮崎に、ここまでの三振数の差が出るとは…。 三振は一概に悪いことではないが、近本が1試合3三振とは。だから岡田は近本の現況を明かしたかったのかもしれない。それは今後のタイガースのキモになる事象だからで、近本が1番で力を発揮しない限り、打線の上昇は望めない。1番に戻ったことで、本来の姿になるのでは、と思っていたが、それは甘かった。4番を打ったことで、少しばかりバッティングに変化があったのか。これは本人しかわからないが、いまの結果をみる限り、悪いイメージを引きずっているように見えて仕方ない。 昨年、リーグを席巻した阪神の1、2番。近本に本来の姿がないと同時に2番の中野も精彩を欠いたまま。近本が出ても、中野は塁を進めることができず、凡飛を打ち上げるケースが多い。盗塁を含め、この1、2番で仕掛けて、チャンスを大きくするという得意技は消え、単純な攻撃に終わってきた。 今後、阪神が混戦を抜け出すには? 大山や佐藤輝、森下の名前が出るが、実際はこの1、2番次第といえる。近本が3割に近い数字にもっていき、中野もまたつないで一、三塁といった形を作れるかどうか。なんといっても実績のある2人だ。近本はこのままで終わるはずがない。岡田が近本のことを言いかけたのは、やはりチームのキーになるからだ。「もう結果しか求められていないですから」と近本は語っている。彼の打率、三振数、四球数の推移に注目する時期にきた。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)