「兵士は車いすの娘に犬をけしかけて笑った」 過去20年で最大規模のイスラエル軍事作戦、民間人も犠牲…パレスチナ人に広がる憎悪
イスラエルでは昨年末、対パレスチナ強硬派の極右政党が参加するネタニヤフ政権が発足、ヨルダン川西岸での入植地拡大をさらに進めるほか、パレスチナ武装勢力への急襲作戦を強化した。 イスラエルメディアによると、今回の戦闘で死亡した12人を含め、西岸でのパレスチナ側の死者は今年に入りこれまでに約150人に上る。パレスチナ人によるイスラエル人襲撃も相次ぎ、イスラエル側で二十数人が死亡した。 ▽「何千人でも殺せ」息巻く極右閣僚 西岸には今や約40万人の入植者が暮らすが、相次ぐ襲撃事件を受け、入植者らが政府や軍にパレスチナ武装勢力の一掃を強く求め、2000年代の第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)以来の規模となる今回の軍事作戦に至ったとみられている。入植者に支持される極右政党党首、イタマル・ベングビール国家治安相は大規模作戦を強く提言、「何千人でもテロリストを殺せ」と息巻いた。 また、軍を含めイスラエル治安当局にはもう一つ別の思惑があったとも指摘される。武装勢力の軍事力拡大を防ぐ狙いだ。軍は6月中旬にもジェニン難民キャンプを急襲し、6人を殺害した。その際、軍用車両が武装勢力の地雷で走行不能になり、兵士救出のために約20年ぶりに戦闘ヘリコプターを投入する事態となった。
6月下旬には、ジェニンから手製のロケット弾が発射された。試作段階とみられるが、ヨルダン川西岸で本格的にロケット弾が発射されれば、イスラエルは北部レバノン、南部ガザ、東部西岸という3方面からのロケット弾攻撃にさらされる可能性が出てくる。「あらゆる手段で脅威を取り除け」と主張したガンツ前国防相をはじめ、危機感は強い。 難民キャンプを拠点に拡大するパレスチナ武装勢力に資金や武器を援助するのが、イスラエルと対立するイランだ。イスラエル軍の元幹部は「イランは西岸での足掛かりを得ようと、ジェニンなどの武装勢力に資金や武器を援助している。武器はシリアやヨルダンからいくらでも密輸できる」と指摘する。「イスラエルとパレスチナの対立が激しくなれば、関係を深めるイスラエルとアラブ諸国との間に亀裂を入れることができるとの思惑もあるのだろう」 ▽国連総長も「過剰な実力行使」非難 イスラエル軍は軍事作戦でキャンプ内の舗装道路を徹底的に破壊し、民間インフラに被害が相次いだ。キャンプを運営する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が被害状況を調査中だが、建物被害は数百棟に上ると指摘される。