「検察なめんな」と怒鳴る、机を叩く… 「拷問」のような取り調べはなぜなくならないのか
■他の事件でも名前が出てきた堀木検事 元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、相次いで告発される検察の脅迫的な取り調べについて、こう話す。 「和歌山地検の検事のニュースを見て、またかと思った。そして、テクノシステムの事件で堀木検事の名前が出て、もうあきれるしかありません」 実は、堀木検事の取り調べが問題になったのは今回だけではない。 安倍晋三元首相や妻昭恵氏の関与が疑われ、財務省が公文書を改ざんするなどの事態に発展した森友学園をめぐる問題で、2017年に詐欺罪で逮捕・起訴され、23年に実刑判決が確定した同学園理事長の籠池泰典氏(受刑中)の取り調べも堀木検事だった。 籠池氏は私の取材に、 「堀木検事は容疑と関係ないことで私を怒らせて自白するような調書をとろうとしたり、『早く認めてここから出よう』『認めたらすぐ出れる』と、やっていない嘘を供述させ、それで調書を作ろうと促してきた。こちらの主張を捻じ曲げてでも立件しようとする、本当に正義のない検事だ」 と話していた。 前出の、大阪地検特捜部に逮捕されたが無罪になったプレ社の山岸氏の著書には、山岸氏が保釈を請求しようとした際、堀木検事が反対の意見書を書いて保釈を妨害していた話が出てくる。 さらに、郷原弁護士が手掛けている東京五輪汚職事件でも、堀木検事の強引な取り調べの話は聞いていたと言う。 ■「検察幹部は見て見ぬふり」 録音録画されているにもかかわらず、なぜ「自白強要」「拷問」のような取り調べが噴出するのか。郷原弁護士はこう話す。 「検察には強大な権限が与えられている。だから、世の中が刑事司法、検察を中心にまわっていると勘違いし、変な正義感を持つ検事が出てくる。取り調べで否認や黙秘されると、録音録画されていることを忘れて、その変な正義感で強引に調書をとろうとするから、こういう問題が繰り返される。検察幹部もそんな検事がいることは把握しているはずだ。私からみればブルドッグのような検事だが、検察幹部にとっては無茶をやっても自供をとってくるので見て見ぬふり。このままではいつまでたっても悲劇が繰り返される。冤罪はなくならない」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之