「検察なめんな」と怒鳴る、机を叩く… 「拷問」のような取り調べはなぜなくならないのか
怒鳴る、脅す、侮蔑する――そんな検察のひどい取り調べの実態が、次々に噴き出ている。 【写真】まるで拷問だと検察の取り調べを訴えた告訴状 昨年4月、衆院補欠選挙で和歌山市内に応援演説で駆け付けた岸田文雄首相(当時)に爆発物を投げつけた木村隆二被告は、現行犯逮捕され、その後、殺人未遂や爆発物取締罰則違反(爆発物使用)などで起訴された。 この木村被告の取り調べで、和歌山地検の検事が、 「木村さんは小学校低学年くらいの知識」 「逮捕されても誰も困らない」 「かわいそうな木村さん」 などと人格否定をするような発言をしていたことが明るみに出た。 木村被告の弁護人が、最高検の監察指導部に抗議の書面を送付した結果、最高検は録音録画された取り調べ状況を確認して、 「不適正な取り調べだった」 と認定したのだ。 大阪地検特捜部の証拠改ざん事件などを受けて、検察は再発防止策として、裁判員裁判の対象となる事件や検察が独自捜査する事件での、取り調べの録音録画を義務付け、2019年から実施されている。だが、その録音録画された状況でも、検察のひどい取り調べが続いている。 ■脅迫的な取り調べでの供述が否定され無罪判決 大阪高裁は8月、大阪市の不動産会社「プレサンスコーポレーション」の創業者、山岸忍氏が、大阪地検特捜部の検事に対して特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判を開くよう求めた付審判請求を認める決定をした。特捜検事が取り調べをめぐって付審判で罪を問われるのは初めてだ。 山岸氏は2019年に大阪地検特捜部に逮捕・起訴され業務上横領罪に問われたが、無罪を主張。関係者の取り調べの中で、特捜部の田渕大輔検事が、山岸氏の部下に対して、 「あなたは会社の評判をおとしめた大罪人ですよ」 「検察なめんな」 などと大声をあげたり、机をたたいたりしながら、脅迫するような取り調べをしていたことが録音録画に残されていた。 山岸氏側は、検察が山岸氏の罪を問う根拠としている部下の供述は信用できないと主張。大阪地裁はこれを認めて、山岸氏に無罪の判決を出した。検察も控訴断念に追い込まれ、21年に山岸氏の無罪が確定した。