プライバシーがない二世帯住宅でも意外とやっていける?親世帯と子世帯を分けずに、吹き抜けでつないでみたところ…
各部屋の雰囲気が“ 路地”へとにじみ出し、家全体に浸透する
子世帯の長女は、個室に続くインナーテラスに机を置き、本を広げたり物を飾ったりしています。 “路地”は単なる外部ではありません。そこには、自由があると同時に家族の気配があり、見守られているという安心感があります。 視線を巡らせば、ダイニングで話し込む祖母と母の姿があり、テラスでくつろぐ父親も見えます。時々は階段の踊り場に座り、手製の釣り竿で“魚釣り”をして遊びます。 1階の玄関に祖父が出先から戻ると、「お帰り!」と声を掛け──各部屋に対して巧みに開かれた階段室が、家族の姿や声、気配を伝え、家族を1つにします。
「私たちは今、プライバシーを優先し、つながることを避ける時代にいます。しかしこの住宅は、共に暮らす家族のつながりを支え、その楽しさを思い出させるものになってくれるのではないかと思っています」と武藤さん。 あらかじめ隔てられた二世帯が、建築家がここと想定した“共有空間”に集うというのではありません。決めごとを何ももたない自由な“路地”が、変哲もない日々の暮らしのなかでさりげなく家族をつないでいます。