【虎になれ】2度のリリーフカー…恥ずかしながら大仕事 影のヒーローは阪神島本浩也だ
<DeNA3-4阪神>◇10日◇横浜 リリーフカーに乗っていた島本浩也が「戻れ」と言わんばかりにグラブを振る。その直前、左翼を守っていた井上広大が三塁側ベンチに走っていったが、あわてて守備位置に戻った。 2点のリードをはき出した6回裏、なおも1死一、二塁のピンチ。DeNAの打順は1番・神里和毅にまわった。左打ちの好打者だ。阪神ベンチは投手を右腕・石井大智から左腕・島本に交代。井上を下げ、その打順に島本を入れる、いわゆる「ダブルスイッチ」に出ようとしたのである。 だがDeNAベンチは右打ちの蝦名達夫を代打で立ててきた。阪神ベンチはあわてて石井の続投を決断。流れ的に、タイムラグが生じて、こうなった。 「向こうが先に右の代打出すからビックリするわ。待っといたらエエのにな。左(打者)3人でなあ。左(投手)いくの、分かってなかったんかな。投手を代えるのが先やないか。打者を先に代えられたから石井も投げささなしゃあない。ビックリしたわ。オレが間違えたのかなおもて」 指揮官・岡田彰布もそう振り返る場面。もちろん駆け引きもあるのだろうが緊迫した場面なのに妙に笑いを誘うシーンだった。 ここで急きょ続投となった石井がその蝦名を三振に切り、2死一、二塁。2番・左打ちの関根大気が打席に入ったところで予定していた「島本投入・井上交代」が実行された。まあまあ照れくさい場面だ。 独断で言えば、もっとも恥ずかしかったのは1試合で2度もリリーフカーに乗った島本だろう。正直、動揺していないかなと思ったがそんなところはみじんも見せない。関根をきっちり遊飛に打ち取り、ピンチを切り抜けた。 それだけではない。「回またぎ」で7回もマウンドに上がると佐野恵太、右打ちの牧秀悟、そして途中出場で前の打席で三塁打を放っていた森敬斗を一ゴロに打ち取り、クリーンアップを3者凡退に打ち取ったのである。 「恥ずかしかったです」。島本もそう振り返ったが阪神の強みがハッキリと出た試合だろう。現状、最大の強みはブルペンだ。救援防御率はDeNAの「3・22」に対し、阪神は12球団トップの「1・34」。その中で地味だが光っているのは左腕・島本である。この日は桐敷拓馬が体調不良でベンチ入りしていなかった。そこをカバーしての勝利。これは大きい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)