〔国内〕2024年の災害を振り返る
2024年を締めくくるにあたり、今年発生した国内での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●1月 【自然災害】石川県能登地方で「令和6年能登半島地震」発生、最大震度7を石川県志賀町と輪島市で観測 [被害]死者489人 負傷者1870人 行方不明者2人 家屋損壊14万9724軒(12月24日現在) 2024年1月1日16:10頃、石川県能登地方(北緯37.5度、東経137.3度)、深さ16kmを震源とするマグニチュード7.6の地震が発生した。この地震で石川県志賀町と輪島市で震度7、七尾市や珠洲市、穴水町、能登町で震度6強の揺れを観測した。気象庁はこの地震を「令和6年能登半島地震」と命名した。 また、地震による津波発生が予想されたことから、石川県能登地方には大津波警報が発表されたほか、日本海側の広い範囲で津波警報や津波注意報が発表された。大津波警報の発表は2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以来、13年ぶりのことだった。観測された津波は当初、最大で輪島港で高さ1.2m以上とされたが、地震により能登半島の広い範囲で隆起などの大きな地殻変動が確認されたことから、後にこの観測記録を取り消している。なお、新潟県上越市では、遡上した津波の痕跡が高さ5.8mに達したことが確認されている。 政府の地震調査委員会によると、令和6年能登半島地震を引き起こした原因のひとつとして、複数の活断層が連動してずれ動いた可能性が高いとの見解を示している。本震以降も地震活動の活発な状態が続き、1月1日以降の地震回数は、2月8日までに最大震度6弱を2回、5強を8回、5弱を7回観測するなどあわせて1600回以上に達している。 一連の地震活動で人的被害は死者が489人、負傷者が1870人に上っている(内閣府、12月24日現在)。またライフラインでは停電や断水も能登半島の広範囲で続いており、発生から1か月経っても明確な完全復旧のめどは立っていない。 【事故】羽田空港で日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し炎上 [被害]死者5人 負傷者16人 2024年1月2日17:47頃、東京都大田区の羽田空港で、日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突し、両機体が炎上した。この事故で海上保安庁の航空機の乗員6人のうち5人が死亡し、1人が負傷した。また、日本航空の旅客機に搭乗していた乗員・乗客のうち、15人が負傷した。 国土交通省などによると、新千歳空港発羽田空港行きの日本航空516便が羽田空港のC滑走路に南側から着陸した際、滑走路上にいた海上保安庁所属のプロペラ機と衝突した。両機体とも衝突により炎上。日本航空516便は炎上しながら滑走路を進み、滑走路の北側で停止したのち、乗客・乗員379人は全員脱出した。 この事故で羽田空港は一時全ての滑走路を閉鎖していたが、A・B・D滑走路は2日の21:29に運用を再開、C滑走路は8日の00:00から運用を再開した。9日までに1491便が欠航し、26万人に影響した。現在、運輸安全委員会が衝突・炎上した2機のフライトレコーダー等を回収し、解析を行っている。 海上保安庁のプロペラ機は1日に発生した令和6年能登半島地震を受けて、羽田空港から新潟航空基地に支援物資を輸送する途中だった。 【自然災害】北日本から西日本の日本海側を中心に大雪 [被害]死者4人 負傷者15人以上 2024年1月23日頃から、日本付近に強い寒気が流れ込み、強い冬型の気圧配置が続いたことで北日本から西日本の日本海側を中心に広い範囲で大雪となった。 特に23日夜から24日午後にかけて、福井県、岐阜県、滋賀県の山間部で強い雪となり、6時間降雪量が岐阜県関ケ原町関ケ原で49cm、岐阜県本巣市樽見で43cmを観測するなど、4ヶ所で観測史上1位の値を更新した。また、24日の午前には福井県、滋賀県で「顕著な大雪に関する気象情報」が発表された。 この大雪で高速道路では立往生やスリップ事故が発生した。岐阜県関ケ原町の名神高速道路関ケ原IC付近では、上り線で5.5km、下り線で6.6kmにわたり、あわせて750台以上が立往生した。また、三重県菰野町の新名神高速道路上り線では、トラックのスリップをきっかけに車両6台が相次いで衝突し、3人が搬送された。 令和6年能登半島地震で被災した石川県能登地方でも大雪となり、22日に行われた国土交通省の緊急会見では、損傷を受けた家屋が積雪の重みで倒壊するおそれなどがあるとして、注意が呼びかけられた。 ●2月 【自然災害】南岸低気圧の影響により関東甲信地方で警報級の大雪 [被害]負傷者250人以上 2024年2月5日から6日にかけて、低気圧が発達しながら本州の南岸から日本の東へ進み、関東甲信地方の上空に寒気が流れ込んだ。この影響で、関東甲信地方では広く大雪となり、気象庁は東京23区を含む関東甲信地方のすべての都県に大雪警報を発表した。5日の24時間で長野県飯山で46cm、群馬県草津で34cm、東京都東京でも9cmの積雪を観測した。この大雪の影響で、東京、埼玉、神奈川、千葉などで歩行中の転倒や車のスリップ事故により250人以上が負傷したほか、交通機関にも大きな被害が及んだ。 鉄道ではJR中央本線で、大雪による倒木や倒竹の影響により、複数の列車が駅で停車したままとなり、多くの乗客が列車の中で一夜を過ごした。東京23区内でも、新交通システム「ゆりかもめ」で2本の列車が立ち往生し、乗客550人が汐留駅まで歩いて移動した。 高速道路では各社が5日の昼前から「予防的通行止め」を実施し、大きな事故はなかった。一方で首都高速道路では除雪に時間がかかった影響で、すべての路線で通行止めが解除されたのは7日の16:30と、50時間以上通行できない区間もあった。このため、迂回先の道路が混雑するなど運送業などを中心に大きな混乱を招いた。 ●3月 【自然災害】令和6年能登半島地震から2か月 ライフラインを中心に影響続く [被害]死者489人 負傷者1870人 行方不明者2人 家屋損壊14万9724軒(12月24日現在) 2024年1月1日16:10頃に発生した令和6年能登半島地震(M7.6、最大震度7(石川県輪島市、志賀町))から3月1日で2か月が経過した。 石川県能登地方では、2020年12月以降地震活動が続いていたが、1月1日のM7.6の地震以降は、震源域が能登半島及びその北東側の新潟県佐渡沖にかけての海域を中心として、北東~南西方向に150km程度の範囲に拡大した。気象庁は、1月1日のM7.6の地震発生当初と比べて、震度5弱以上の大きな揺れを伴う地震の発生する可能性は低くなってきたものの、地震活動の活発な状態は続いているとして今後の地震活動に注意するよう呼びかけている。 内閣府によると、12月24日現在、この地震による人的被害は、死者が石川県で483人、新潟県で4人、富山県で2人、負傷者が石川県、新潟県、富山県を中心に1870人となっている。 また、物的被害では、家屋損壊が石川県、新潟県、富山県を中心に14万9724軒に及んでいるが、最も揺れの大きかった石川県(家屋損壊10万2406軒)に次いで、新潟県(同2万4064軒)の被害も大きくなっている。新潟県では、県全体の家屋損壊の約7割が新潟市に集中しているが、これは液状化現象が発生したことによるものとみられており、特に地下水面の浅い元の河川の流路跡や池などを埋め立てたところで大きな被害がみられる。 ライフラインについては、停電が石川県内で地震発生当時の約4万軒から710軒まで大きく減少した一方、断水は地震発生当時の約11万5000軒からは減少したものの、依然として2万軒余りに影響が出ており、珠洲市では現在も市内のほとんどの地域で断水が続いている。石川県は断水について、多くの地域では3月中の仮復旧を目指して復旧作業を進めるとしている。 一方、復興に向けた動きも出てきている。 このうち、仮設住宅については、被害の大きかった輪島市や珠洲市など石川県能登地方の市町村も含め建設や完成・入居が順次進められている。石川県内での仮設住宅は2月末までに約3500戸が着工されたが、入居希望は7000件超となっていることから追加着工が急がれている。しかし、山間部の多さや道路の被災もあって用地の確保や早期の建設促進に課題が残っている。 また、北陸地方の4県(新潟県、富山県、石川県、福井県)では、3月16日から4月26日まで旅行者を対象に旅行・宿泊料金の割引を支援する北陸応援割を実施することも決まった。このうち石川県では、被災者の2次避難先として県内の宿泊施設が使用されていることから、宿泊施設側が2次避難者の受け入れを続けながら一般旅行者の宿泊にも対応できるような制度設計が図られた。 【自然災害】雪崩による人的被害 各地で相次ぐ 2024年3月、全国各地で雪崩による人的被害が相次いだ。 3月2日12:00過ぎ、鳥取県の大山で登山中の3人が雪崩に巻き込まれた。70代の男性1人はすぐに救助され、命に別状はなかった。残る50代の男性2人については、警察による捜索が続けられていたが、1人は3月16日に、もう1人も3月30日にそれぞれ発見され、死亡が確認された。 3月3日12:30過ぎ、北海道の利尻山で、バックカントリーのツアー客のうち7人が雪崩に巻き込まれ、40代の女性が死亡し、20代の男性が足の骨を折る重傷、そのほかツアー客2人が軽いけがをした。その後、日本雪氷学会の調査で、幅130m、長さ700mにわたる大規模な表層雪崩が発生していたことが判明した。また、同じく3日15:40頃、北海道の東狩場山でも雪崩が発生し、バックカントリーでスノーモービルに乗っていた15人のグループのうち、20代の男性1人が雪崩に巻き込まれて死亡した。 3月11日11:00頃には北海道の羊蹄山でバックカントリースキーなどをしていた外国籍の男女3人が雪崩に巻き込まれた。このうち30代の男性1人と20代の女性1人が死亡し、別の男性1人がけがをした。同じく11日の12:40頃、北海道のイワオヌプリでもバックカントリーでスキーをしていた外国籍の30代の男性1人が雪崩に巻き込まれ、病院に搬送された。 【事故】山口県下関市の六連島沖でタンカー転覆 [被害]死者9人 行方不明者1人 2024年3月20日07:00頃、山口県下関市の六連島の北北西の沖合で、悪天候により停泊していた韓国船籍のケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN(キョヨン・サン)」(870トン・1996年建造)から「船が傾いている」と救助を要請する通報があった。門司海上保安部が巡視船や航空機を出動させ、転覆した状態の船を発見した。 乗組員はインドネシア人8人、韓国人2人、中国人1人のいずれも外国籍の11人。救命胴衣を着用していた9人は救助され、病院に搬送されたが、8人が死亡した。その後の夜を徹した捜索により、翌朝新たに1人が発見されたものの、死亡が確認された。残る1人は行方不明のままとなっている。 転覆した「キョヨン・サン」は、兵庫県の姫路港を出港し、韓国の蔚山へ向かう途中、悪天候のため20日00:00頃に「緊急入域」を申請。六連島沖に停泊し、天候が回復するのを待っていた。 福岡管区気象台によると、事故当時、現場周辺には暴風警報と波浪注意報が発表されていた。タンカーには有機化合物「アクリル酸」約980トンが積まれていたが、流出は確認されていない。 【自然災害】栃木県と埼玉県で震度5弱 茨城県南部が震源 M5.3 [被害]人的被害なし 建物の一部損傷あり 2024年3月21日09:08頃、茨城県南部を震源とするM5.3の地震が発生し、栃木県下野市と埼玉県加須市で震度5弱の揺れを観測した。また北関東の広い範囲で震度4を観測した。 この地震による揺れで、栃木県下野市、埼玉県加須市、埼玉県さいたま市の学校や公共施設で天井のボードやパネルなどが落下したほか、壁にひびが入るなどの被害が発生した。また、揺れを観測した各地でエレベーターの一時停止も発生したが、いずれも人的な被害は発生しなかった。 地震による揺れが強いエリアを通る東北・上越新幹線や東武鉄道の一部路線で運転を見合わせたが、11:00までに運転を再開した。また、一部のJR在来線でも一時、安全を確認するために速度を落として運転したほか、東北自動車道など高速道路では速度規制が行われた。茨城県の東海第二原子力発電所など、茨城県内にある原子力関連施設には異常はなかった。 関東では、約1か月前の2月26日以降、千葉県東方沖とその周辺で地震活動が活発となっていた。今回の地震は千葉県東方沖の地震との関連性はなかったが、気象庁は揺れの強かった地域で落石や崖崩れなどが起こりやすい可能性があるとして、1週間程度最大震度5弱の地震に注意するよう呼びかけた。 ●4月 【自然災害】各地で最大震度5弱以上の強い地震相次ぐ [被害]負傷者2人 2024年4月2日04:24頃、岩手県沿岸北部を震源とするM6.0の地震が発生し、青森県八戸市、三沢市、岩手県宮古市、久慈市など9市町村で震度5弱を観測したほか、北海道から関東甲信地方にかけての広い範囲で震度4~1を観測した。岩手県沿岸北部では長周期地震動階級2を観測した。 この地震で、各地で天井が剥がれたりガラスが割れるなどの被害が発生し、青森県で2人が負傷した。また、青森県八戸市の是川地区では一時一帯でガスの供給が停止したほか、岩手県では花巻市で一時約200軒が停電した。 6日後の8日10:25頃には、大隅半島東方沖を震源とするM5.1の地震が発生し、宮崎県日南市で震度5弱を観測した。さらに9日後の17日には、豊後水道を震源とするM6.6の地震により、愛媛県愛南町、高知県宿毛市で震度6弱を観測しており、4月の上旬から中旬にかけて、各地で強い揺れを観測する地震が相次いだ。 【自然災害】愛媛県と高知県で震度6弱 震源は豊後水道 [被害]負傷者16人 一部損壊10軒 2024年4月17日23:14頃、豊後水道を震源とするM6.6の地震が発生し、愛媛県愛南町と高知県宿毛市で震度6弱の強い揺れを観測した。また、愛媛県では宇和島市で震度5強の揺れを、愛媛県南予の5市町と大分県津久見市と佐伯市で震度5弱の揺れを観測した。 この地震により、転倒や転落で16人が負傷し、家屋の損傷や塀の倒壊なども発生した。また高知県梼原町では、道路の寸断により1集落5世帯10人が一時孤立したほか、愛媛県大洲市の宇和川地区では落石が発生し、国道197号が一時通行止めとなった。鉄道ではJR四国の予讃線の一部区間や予土線が翌日まで運転見合わせとなった。 震源となった豊後水道は、南海トラフ地震の想定震源域内だが、気象庁が南海トラフ地震との関係を調査するマグニチュードの基準(M6.8)の未満だった。 【事故】伊豆諸島・鳥島沖で海自ヘリ2機が墜落 [被害]死者1人 行方不明7人 2024年4月20日22:38頃、伊豆諸島・鳥島の東約270kmの洋上で、海上自衛隊のヘリコプター2機が訓練中に相次いで消息を絶った。海上自衛隊の護衛艦をはじめ自衛隊や海上保安庁などの捜索の結果、現場海域で機体の一部とみられるものが見つかったことから、ヘリコプターは墜落したものと断定された。2機のヘリコプターには合わせて8人が搭乗しており、これまでに1人が救助されたが、その後死亡が確認された。残る7人は現在も行方不明となっている。 墜落したヘリコプターはいずれも哨戒機「SH-60K」で、当時は潜水艦を探知して対処する「対潜戦」の訓練が行われていた。この訓練では、潜水艦の位置をより正確に把握するため、特定の空域で複数のヘリコプターが連携して任務にあたるため接触の危険性が高いとされている。今回の事故でも、現場海域で回収された2機それぞれのフライトレコーダーの解析により、2機とも飛行状態や機体の異常を示すデータはなく、同時刻・同位置で通常と大きく異なる高度変化などが確認されたことから、防衛省は2機が空中で衝突し墜落したことが判明したとした。 この解析結果を受けて、防衛省では事故発生直後から中止していた同型機による訓練飛行について、機体同士の衝突のおそれがない単機について5月3日より再開すると発表した。 ●5月 【事件】北関東と周辺の山間部で連続強盗事件相次ぐ [被害]負傷者4人 2024年4月30日から5月14日にかけて、栃木、長野、群馬、福島の4県で、相次いで強盗事件が発生した。いずれも手口は共通しており、未明に山間部の住宅へ押し入り、住民を縛り現金や財布などを奪う事件だった。 最初に発生した4月30日の事件は、00:00から01:00にかけて、栃木県日光市足尾町の住宅に男2人が押し入り、住人の70代男性を襲い縛った後、現金およそ3万4000円が入った財布やキャッシュカードを奪った。 5月6日には、02:30過ぎに長野県松本市保福寺町の住宅へ男2人が押し入り、住人の男性を刃物で脅したうえで縛り、現金十数万円を奪って逃走した。また、5日午後にも周囲の空き家へ何者かが侵入し、タンスや仏壇を荒らす事件があり、警察が関連を調べている。 5月8日02:20頃、群馬県安中市松井田町の住宅に男2人が押し入り、70代男性を脅し縛り軽傷を負わせた上で財布を奪って逃げていた。この事件では、住人の携帯電話を室内の衣装箱ケースに入れ、通報を遅らせる工作を行っていた。 4件目となった5月14日01:05頃の事件では、福島県南会津町藤生の住宅に男2人が押し入り、就寝中だった住人の60代女性を縛った。男は「カネ」など外国人のような片言の日本語で脅し、現金1万数千円を奪って逃げた。なお、この事件と群馬県安中市の事件では、戸締まりを行っていたものの、窓ガラスを割るなどして押し入っていた。 一連の事件で、栃木、群馬、長野県警の合同捜査班は15日、群馬県高崎市に住むベトナム国籍の男2人を栃木県の事件に対する容疑で逮捕し、その後各県の事件に対する疑いで再逮捕した。また男2人と同居していたベトナム国籍の男を不法残留の容疑で現行犯逮捕した。 一連の事件では、事件が発生した自治体が警戒を呼びかけ、学校の登下校などで警戒を強めるなど、地域に対しても影響を与える事件となった。 【自然災害】西日本・東日本太平洋側を中心に5月として記録的な大雨・強風 [被害]死者2人 負傷者1人 家屋浸水22軒 2024年5月27日から29日にかけて、前線と低気圧の通過により、西日本と東日本の太平洋側を中心に広い範囲で大雨や強風となり、死傷者や家屋の浸水などの被害があったほか、停電などライフラインや交通機関に影響が生じた。 前線を伴った低気圧が西日本から東日本の太平洋側を進み、この低気圧や前線に向かい、フィリピンから日本の南海上を北上してきた台風1号からの暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、西日本・東日本では太平洋側を中心に5月としては記録的な大雨となった。特に28日は四国を中心に大雨となり、高知県香美市繁藤で12時間雨量が5月の観測史上1位となる305mmを観測するなど、これまでの5月の観測記録を更新する地点が相次いだ。この大雨の影響で、愛媛県久万高原町で28日午後、水田で農作業中の男性の行方が分からなくなり、3日後の31日に川の下流で遺体で発見されたほか、香川県、高知県、愛媛県で家屋の浸水被害が確認された。 また、関東甲信地方や静岡県では、低気圧が通過した28日夜に非常に強い風が吹き、最大瞬間風速は25m/sを超えたところもあった。この影響で、首都圏の鉄道では運転見合わせやダイヤ乱れが相次ぎ、帰宅の足が大きく乱れた。さらに、最大瞬間風速が5月1位の記録を更新する28.8m/sを観測した山梨県富士河口湖町では、強風による倒木の下敷きとなった男性が死亡した。 今回の大雨に先立って、気象庁は27日から28日にかけて、線状降水帯による大雨が予想されるとして、鹿児島県(奄美地方を除く)と奄美地方、宮崎県、高知県、徳島県、岐阜県、愛知県、静岡県の8県・地域に事前の呼びかけを行った。気象庁では、線状降水帯による大雨の事前の呼びかけについて、対象地域をこれまでの地方単位から府県単位に絞り込む運用を28日09:00から行う予定としていたが、今回の大雨の予想を受けて前倒しし、27日11:00から運用を開始した。実際には線状降水帯の発生には至らなかったが、気象庁では、事前の呼びかけがされた場合は、線状降水帯が発生しなくても大雨となる可能性が高い状況になると言えるため、避難経路の確認など大雨災害に対する心構えを一段高めて欲しいとしている。 ●6月 【自然災害】石川県能登地方でM6.0の地震 石川県輪島市・珠洲市で最大震度5強を観測 [被害]負傷者2人 全壊7軒 2024年6月3日06:31頃、石川県能登半島地方を震源とするM6.0の地震が発生し、石川県輪島市と珠洲市で震度5強、能登町で震度5弱の揺れを観測した。また、東北地方から中国・四国地方の広い範囲で震度4~1の揺れを観測した。この地震で、石川県津幡町では女性1人が重傷を負ったほか、富山県滑川市でも男性1人が負傷した。輪島市では、1月1日に発生した能登半島地震により倒壊していた建物7軒がさらに倒壊、能登町では建物の天井が落下するなどの被害があった。 この地震では、東北から近畿までの26都府県に緊急地震速報が発表され、首都圏でも鉄道のダイヤが乱れるなどの影響が出た。気象庁によると、同時刻に同じ場所で地震が連続して発生したため、緊急地震速報に用いられる地震波の検知が不安定になり、地震の規模を過大評価したことで、広い範囲に対しての発表となったと説明している。 能登地方で震度5弱以上の地震を観測したのは、1月16日に石川県志賀町で最大震度5弱を観測した地震(M4.8)以来、約5か月ぶりとなる。 【自然災害】梅雨前線を伴った低気圧で静岡県伊豆地方を中心に大雨 [被害]床上浸水36軒 床下浸水103軒 2024年6月17日から19日にかけて、沖縄から東日本の太平洋側の広い範囲で大雨となった。大雨の原因は梅雨前線を伴った低気圧で、南から暖かく湿った空気が流れ込んだことで、特に静岡県伊豆地方で強い雨が降った。観測地点によっては12時間雨量が6月で最も多かった地点もあり、伊豆市湯ヶ島で301mm、熱海市網代で255.5mmを観測した。 大雨直前の6月17日には、国土交通省九州地方整備局と福岡管区気象台が合同での記者会見を行い、九州南部での大雨警戒を呼びかけたほか、四国や九州南部で線状降水帯発生の恐れがあるとの予報も出されたが、結果的には静岡県での降雨が多いという形になった。 一連の大雨による人的被害は報告されていないが、総務省消防庁によると、静岡県沼津市では30軒が床上浸水、70軒が床下浸水になるなど、静岡県では139軒が浸水被害を受けた。また、高知県田野町では突風が吹き、ビニールハウスの倒壊や損傷といった被害が出た。 【自然災害】鹿児島県・静岡県で線状降水帯による大雨 [被害]半壊1軒 床上浸水1軒 床下浸水17軒 2024年6月下旬、西日本から東日本にかけて停滞する梅雨前線の活動が活発となった影響で、広い範囲で断続的に非常に激しい雨が降って大雨となった。特に、鹿児島県と静岡県では線状降水帯が発生して家屋の損壊や浸水などの被害があった。 このうち、鹿児島県では、6月21日05:18に大隅地方、次いで05:27に薩摩地方で線状降水帯が発生し、顕著な大雨に関する気象情報が発表された。これに先立ち、鹿児島県を含む九州南部には、前日の6月20日昼前から線状降水帯発生の可能性を予想する気象情報が発表されていた。この大雨により、鹿児島県指宿市では、24時間降水量が観測史上1位の記録を更新する423mmに達し、市内では住宅に土砂が流れ込み1軒が半壊するなどの被害があった。また、鹿児島市の国道でも道路脇ののり面が崩れ車2台が巻き込まれたが、けが人はなかった。 6月28日には静岡県で大雨となった。6月28日10:47には静岡県西部、次いで11:17に静岡県中部で線状降水帯が発生し、顕著な大雨に関する気象情報が発表された。県内では、藤枝市高根山で11:20までの1時間に86.5mmの猛烈な雨が降り、日降水量が平年の6月1か月分の約75%に相当する247mmに達するなど広い範囲で大雨となった。この大雨により、磐田市では豊岡地区で上野部川が氾濫し住宅11軒が浸水するなど、県内であわせて住宅18軒が浸水する被害があった。また、東海道新幹線が下り線の東京~浜松駅間、上り線の新大阪~三島駅間で一時運転を見合わせるなど交通機関にも影響が生じた。 この6月28日の大雨については、前日の6月27日昼前に発表された線状降水帯発生の可能性を予想する気象情報では、発生が予想される地域を九州北部地方(山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県)としていたものの、実際には事前の予想がなかった静岡県で線状降水帯が発生した。気象庁は、線状降水帯の発生について、半日前の発生予測で実際に発生した「的中」が4回に1回程度、半日までに予測できずに実際に発生した「見逃し」が2回に1回程度あるとしており、大雨警報や土砂災害警戒情報などの段階的に発表される気象情報に注意するよう呼びかけている。 ●7月 【自然災害】梅雨前線の影響により山陰地方を中心に大雨 愛媛県松山市で一時緊急安全確保発令 [被害]死者3人 全壊1軒 一部損壊4軒 床上浸水12軒 床下浸水39軒 2024年7月9日頃から12日頃にかけて、西日本に停滞する梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、山陰地方を中心に記録的な大雨となった。島根県では降り始めから11日04:00までの総雨量が7月の月降水量の平年値を上回り、出雲や斐川、松江では12時間降水量がそれぞれ211.5mm、214.0mm、209.0mmと、観測史上1位を更新した。また、山口県では11日未明に下関市下関付近および下関市菊川付近で1時間に約100mmの猛烈な雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が相次いで発表された。 この大雨の影響で、島根県や山口県を中心に家屋の浸水被害が発生したほか、島根県出雲市では県道が崩落し、市内の一部の地区が一時孤立状態となった。また、愛媛県松山市では、12日04:00前に松山城がある山の斜面で土砂崩れが発生した。土砂崩れは幅50m、長さが300mにもおよび、ふもとの住宅やマンションに土砂が流出、巻き込まれた住宅に住んでいた男性2人、女性1人が死亡した。この土砂崩れを受け、松山市は現場周辺にあたる清水地区の1万3226世帯、2万2062人に緊急安全確保を発令した。緊急安全確保は16日06:00に解除されたが、7月末時点でも清水地区の一部では引き続き避難指示が発令されている。 【自然災害】埼玉県南部の広範囲で突風による被害 [被害]負傷者7人 2024年7月24日昼頃、埼玉県南部の上空を活発な積乱雲が通過し、同県入間郡越生町から草加市にかけての広範囲で突風が発生した。この突風により、看板の落下や倒木、転倒などで2名が重傷、5名が軽傷を負ったほか、住宅の屋根が飛ばされたり窓ガラスが割れたりする被害が相次いだ。また、同県志木市のゴルフ練習場ではコンクリート製の支柱が複数本折れる被害があった。交通やライフラインにも影響があり、JR川越線や東武越生線など複数の鉄道路線が倒木や強風の影響で一時運転を見合わせたほか、24日13:00時点で埼玉県内の3万軒以上が一時停電した。 この突風について熊谷地方気象台は、現地調査の結果、風速が約40m/sに達したと推定され、日本版改良藤田スケールでJEF1に該当すると発表した。また、突風の原因は「ダウンバースト」または「ガストフロント」と呼ばれる気象現象である可能性が高いとした。これらはいずれも積乱雲からの下降気流が引き起こす現象で、突風による被害が面的に広がる特徴がある。 【自然災害】梅雨前線により東北地方日本海側で記録的な大雨 山形県で大雨特別警報を1日に2度発表 [被害]死者2人 行方不明者2人 負傷者3人 家屋損壊17軒 床上浸水427軒 床下浸水935軒 2024年7月25日から26日にかけて、東北地方に停滞する梅雨前線の活動が活発となった影響で、東北地方の日本海側では記録的な大雨となり、山形県と秋田県を中心に人的・物的被害が発生した。 特に山形県では、庄内地方や最上地方を中心に大雨となった。25日午前中には酒田市付近と遊佐町付近で記録的短時間大雨情報が相次いで発表され、昼過ぎには線状降水帯も発生し、気象庁は13:05に酒田市と遊佐町に大雨特別警報を発表した。その後、雨が小康状態となったことから20:10に特別警報は警報に切り替えられたが、夜遅くなって山形県内では再び雨が強まり線状降水帯が発生、気象庁は23:40に酒田市や新庄市など6市町村に大雨特別警報を発表した。この2度目の特別警報の発表について、気象庁は日本海から流れ込んだ雨雲が当初の予想以上に発達したためとし、現在の予測能力では狭い範囲での顕著な大雨の予想は難しいとして、特別警報が警報に切り替わった後も警戒を緩めないよう呼びかけた。 この大雨で、山形県では24時間降水量が新庄市で389mm、酒田市で356.5mmなどこれまでの観測史上1位の記録を更新する地点が相次いだ。県内では最上川中流や鮭川などで氾濫が発生、床上・床下浸水は1000軒を超え、これまでに2人が死亡、1人が行方不明となっている。また、隣接する秋田県でも子吉川が由利本荘市で氾濫するなどして250軒以上の家屋が浸水し、1人が行方不明となっている。また、山形・秋田両県で最大約6600軒が停電、約2800軒が断水するなどライフラインへの影響も大きかったほか、山形新幹線が8月9日まで一部区間で運転を見合わせるなど交通機関にも大きな影響が生じた。 この大雨について、山形県は酒田市や新庄市など16市町村、秋田県は横手市や由利本荘市など10市町村に災害救助法を適用した。 ●8月 【自然災害】日向灘でM7.1の地震 初の「南海トラフ地震臨時情報」が発表 [被害]負傷者16人 全壊1軒 半壊2軒 一部損壊77軒 2024年8月8日16:42頃、日向灘を震源とするM7.1の地震が発生した。宮崎県日南市で最大震度6弱を観測したほか、九州から東海にかけての広い範囲で震度5強~震度1の揺れを観測した。また、宮崎県と高知県、大分県、鹿児島県、愛媛県の沿岸には津波注意報が、千葉県から沖縄県にかけての沿岸部には津波予報(若干の海面変動)が発表され、宮崎市の宮崎港では17:14に50cmの津波を観測した。この地震の影響で熊本県、宮崎県、鹿児島県であわせて16人が負傷したほか、各地で住宅被害や断水・にごり水の発生などが確認された。 この地震を受け、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を8日17:00に発表し、今回の地震と南海トラフ地震との関連性についての調査を開始した。その結果、「南海トラフ地震の想定震源域で大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられる」として、同日19:15に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。国は、南海トラフ地震で著しい被害が発生するおそれがある地域として指定した「南海トラフ地震防災対策推進地域」に対し、地震発生から1週間、日頃からの地震への備えの再確認や、揺れを感じたら直ちに避難できる態勢をとるよう呼びかけを行った。その後、想定震源域においてプレート境界の固着状況に特段の変化を示すような地震活動や地殻変動が観測されなかったことから、15日17:00に特別な注意の呼びかけは終了した。 南海トラフ地震臨時情報の発表は2017年11月1日の運用開始以降で初めてのことであったが、特急列車の運転取りやめやイベントの中止、スーパー等で備蓄用品が品薄になるなど、お盆期間に大きな影響が広がった。 【自然災害】台風5号が上陸・台風7号が接近 東日本・北日本に台風相次ぐ [被害] 負傷者4人 建物被害17軒 2024年8月8日に父島の南で発生した台風5号は、太平洋を北上し、12日08:30頃に岩手県大船渡市付近に上陸したのち、12日夜にかけて遅い速度で東北地方を横断した。 東北地方の太平洋側から台風が上陸するのは、1951年の統計開始以降、2016年台風10号、2021年台風8号に次ぎ3例目と珍しく、岩手県の太平洋沿いを中心に記録的な大雨となった。岩手県久慈市下戸鎖で368.5mm、大槌町大槌で273.5mmの24時間降水量を観測し、ともに観測史上1位の値を更新。久慈市の一部地域には一時、警戒レベル5の「緊急安全確保」が発令された。 この台風により、青森県と岩手県の住家計15軒に浸水や一部損壊等の被害があった。また、岩手県宮古市を流れる田代川の増水により三陸鉄道リアス線の線路を支える盛り土が削られ、同線は9月上旬時点でも一部区間で運行できない状況が続いている。 さらに、8月13日には日本の南で台風7号が発生。14日から15日にかけて小笠原諸島や伊豆諸島に接近したのち発達しながら北上を続け、16日から17日にかけて非常に強い勢力で関東地方の沿岸部に接近した。千葉県銚子市銚子で26.7m/sの最大瞬間風速を観測するなど、伊豆諸島ならびに関東地方や東北地方南部の太平洋側沿岸で非常に強い風が吹いたほか、東日本では関東甲信地方を中心に大雨となったところがあった。 台風7号の影響で、福島県、茨城県、神奈川県で計4人が軽傷を負い、福島県と神奈川県で計2軒の住家が一部損壊した。また、東京都渋谷区の住宅街で街路樹が根元から折れて道路を塞いだほか、大田区ではコンクリート製の電柱が折れる被害があった。 【自然災害】台風10号九州・四国横断、被害や影響が広範囲・長期間に及ぶ [被害]死者8人 負傷者128人 家屋損壊1099軒 床上・床下浸水1280軒 2024年8月22日にマリアナ諸島で発生した台風10号は発達しながら北上を続け、8月29日08:00頃に強い勢力で鹿児島県薩摩川内市付近に上陸、その後は九州と四国を横断して9月1日12:00に東海道沖で熱帯低気圧に変わった。台風の動きが遅く、さらに当初の予想とはかなり異なる進路をとったことから、8月26日頃から9月2日頃にかけての長期間、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨や暴風などによる影響が続いた。 台風10号の発生当初は、日本の南海上を北上し、四国地方や近畿地方に直接上陸して本州を縦断するような予想となっていた。しかし、実際には日本の南海上で西寄りに進路を変え、奄美地方から九州の西の海上を北上して鹿児島県薩摩川内市付近に上陸した。また、上陸後は東寄りに進路を変えて九州と四国を横断、その後は紀伊半島の沖合を進んで東海道沖で熱帯低気圧に変わるという複雑な進路を辿った。このような進路をとった要因としては、日本の南海上にあった寒冷渦に台風が引き寄せられたこと、さらに太平洋高気圧が予想よりも西へ張り出したことなどが考えられている。 また、日本の南海上は海面水温が約30℃と平年よりも高かったため、台風は発達を続け、一時は中心気圧が935hPa、最大風速50m/sの「非常に強い」勢力となった。気象庁は、この勢力を維持したまま九州南部に接近・上陸することが予想されたことから、8月28日午後、奄美地方を除く鹿児島県に暴風・波浪特別警報、鹿児島県薩摩地方に高潮特別警報を発表し、台風への最大級の警戒を呼びかけた。 台風が上陸した九州では、鹿児島県枕崎市で最大瞬間風速51.5m/sを観測するなど猛烈な風が吹き、九州電力管内では一時26万軒以上で停電が発生した。また、宮崎県では県内の複数箇所で相次いで竜巻とみられる突風が発生し、これまでに980軒を超える家屋の損壊が報告されている。 一方、台風から離れた東日本や北日本でも、台風に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込み続けた影響で大雨となった。線状降水帯は岩手県や三重県でも観測され、静岡県では期間降水量が700~1000mm近くに達するなど、平年の8月1か月分の3倍以上になるような記録的な大雨となったところもあった。この台風による家屋の浸水は全国で1200軒以上に及んでいる。 さらに、今回の台風10号の複雑な進路は、交通機関の計画運休の見通しにも影響を及ぼした。なかでも東海道新幹線は、静岡県内での記録的な大雨の影響で8月29日夜に全線での運転を打ち切り、その後は8月30日から9月1日までの3日間にわたり三島~名古屋駅間を中心に計画運休を行うなど、8月最後の週末の人々の移動に大きな影響をもたらした。 ●9月 【事故】神奈川県相模原市で下水道工事中の作業員が流される [被害]死者2人 2024年9月19日、神奈川県相模原市中央区で下水道工事を行っていた作業員2人が流されて行方不明になり、3日後の22日に約6km離れた相模川でこの2人とみられる遺体が発見された。下水道管に大量の雨水が流入したことによる急激な水位の上昇に巻き込まれたものとみられている。19日、事故現場付近では午後から大気が不安定になっていて、同区に設置されたアメダスの観測によると、15:30までの1時間には0mmだった降水量が16:30までの1時間には33mmに達していた。 この事故では、下水道管内の作業員が地上と連絡を取り合うための無線機が故障していたことや、計画とは異なり非常時に危険を知らせる赤色灯が使用されていなかったことにより、作業員への情報伝達手段が機能していなかった可能性が指摘されている。 【自然災害】石川県能登地方で線状降水帯による記録的大雨 能登半島地震の被災地に大きな被害 [被害]死者16人 負傷者47人 家屋全壊3軒 家屋損壊799軒 床上浸水53軒 床下浸水771軒 2024年9月21日から22日にかけて、日本海の低気圧や前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となった。この影響で、石川県能登地方では線状降水帯が発生して猛烈な雨が降り、輪島市、珠洲市、能登町を中心に土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ、大きな人的・物的被害が生じた。 雨は特に9月21日昼前に猛烈な降り方となり、1時間雨量は輪島市で121mm、珠洲市で84.5mm、24時間降水量は輪島市で412mmといずれも観測史上1位の記録を更新した。この大雨に伴い、気象庁は石川県輪島市、能登町に記録的短時間大雨情報を合わせて5回発表し、さらに21日10:50、石川県輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表した。大雨は21日午後にはいったん収まったものの、翌22日朝にも再び雨が強まったことから、大雨特別警報の解除は発表からほぼ1日後の22日10:10になった。 この大雨により、輪島市、珠洲市、能登町では土砂災害や河川の氾濫が相次ぎ、広い範囲で住宅が浸水し、また集落の孤立も相次いだ。能登地方は1月1日の令和6年能登半島地震により広い範囲で土砂崩れや河川の堤防の損壊などの被害が発生しており、復旧作業が続いている中で今回の大雨となったことで、さらに被害が大きくなった。また、中山間地の多い能登半島では仮設住宅の用地確保が難しく、浸水想定区域に建設せざるを得なかった仮設住宅が今回の大雨で床上まで浸水する被害もあり、復旧作業のため仮設住宅の入居者が再び避難するような事態も起きている。 この大雨について、石川県は9月21日、七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町に災害救助法を適用した。さらに10月5日、就任直後の石破首相は能登地方の被災地を視察し、今回の大雨災害を激甚災害に指定する方針を示した。 ●10月 【その他】宮崎空港で不発弾が爆発 全国5空港で緊急調査が開始 [被害]なし 2024年10月2日08:00頃、宮崎県宮崎市の宮崎空港で、滑走路につながる誘導路に埋まっていた不発弾が爆発した。この爆発によって誘導路には長さ約7m、幅約4m、深さ約1mの穴が開き、周辺には数百mにわたって舗装の破片等が飛び散っているのが確認された。誘導路に穴が開いた影響で宮崎空港の滑走路は閉鎖され、計87便が欠航となったが、穴の埋め戻しなどを行ったのちに同日19:30から滑走路の運用が再開された。この日の爆発の前までに国内線4便がこの誘導路を通過していたが、けが人などはいなかった。 自衛隊の調査によると、爆発したのは第二次世界大戦中にアメリカ軍が投下した250kg爆弾とみられている。宮崎空港は旧日本軍の基地があったことから空爆を受けており、これまでにも多数の不発弾が発見されている。不発弾の発見は全国の空港でみられるもので、今月だけでも沖縄県の那覇空港と宮古空港でそれぞれ発見、処理されている。那覇空港では今年に入ってから計8個の不発弾が発見されている。 こうした事態をうけて、国土交通省は旧日本軍の施設があった仙台・松山・福岡・宮崎・那覇の5つの空港で不発弾の緊急調査を行うこととした。16日の夜に行われた宮崎空港での調査では、今回の爆発現場付近の地中から金属が埋まっていることを示す反応が見つかった。20日未明に路面を掘り起こす作業が行われたが、不発弾ではなく大量の砂鉄であったことが確認されたため、20日朝から通常通りの運用が開始された。 【事故】首都高速湾岸線で多重事故 1人死亡 [被害]死者1人 負傷者12人 2024年10月19日07:30頃、東京都大田区の首都高速道路湾岸線西行きの多摩川トンネル内で、渋滞で停車していた軽乗用車にトラックが追突し、合わせて7台が関係する玉突き事故となった。この事故で、追突された軽乗用車に乗っていた男性1人が心肺停止の状態で病院に搬送され、その後死亡が確認された。このほか、追突したトラックの運転手を含む12人が負傷した。 トラックの運転手は「速度メーターに気を取られていた」と話していたといい、警察が詳しい状況を調べている。 【自然災害】宮崎県で線状降水帯による記録的大雨 [被害]死者2人 家屋全壊1軒 家屋一部損壊2軒 床上浸水73軒 床下浸水227軒 2024年10月21日から23日にかけて、高気圧の縁を回る湿った空気や対馬海峡を通過した前線を伴った低気圧に向かって湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となった。この影響で、宮崎県では線状降水帯が発生して記録的な大雨となり、3日間の総雨量は所によって450mmを超えた。この大雨で、県内では死者や家屋の浸水などの被害が相次いだ。 雨は特に22日から23日にかけて強まり、22日夕方には南部平野部に線状降水帯が発生。日南市付近では1時間に約120mmの雨量を解析し、記録的短時間大雨情報が発表されたほか、日南市内では、車に乗っていた70代男性が車ごと川に流され、2日後に河口近くの海岸で死亡しているのが見つかった。 また、22日夜遅くから23日未明にかけては、北部平野部で雨が強まって延岡市付近では1時間に120mm以上の雨量を解析し、記録的短時間大雨情報が発表された。延岡市古江では1時間雨量114.0mm、3時間雨量224.5mmと観測史上1位の記録を更新した。この延岡市では、住宅1軒が土砂崩れに巻き込まれ、住民の50代女性が死亡した。土砂崩れが発生した現場は土砂災害特別警戒区域に指定され、崩れた土砂を止める擁壁なども整備されていたが、今回の土砂崩れは対策を行った場所よりもさらに上部の斜面で発生したとみられている。 ●11月 【自然災害】鹿児島県・沖縄県で11月としては記録的な大雨 [被害]半壊1軒 床上浸水96軒 床下浸水86軒 2024年11月7日から10日にかけて、高気圧の周辺を回る湿った空気の影響で大気の状態が非常に不安定となり、鹿児島県奄美地方や沖縄県本島北部では猛烈な雨が降った。9日未明には線状降水帯の発生により「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されたほか、同日02:40には鹿児島県奄美地方にある与論町(与論島)に大雨特別警報が発表された。 鹿児島県与論町では、9日08:20までの24時間降水量が594mm、沖縄県東村では9日の24時間降水量が403.5mmを記録し、それぞれ観測史上1位を更新。住宅被害では半壊および床上、床下浸水が合わせて200軒近くみられた。また、ライフラインの被害については、沖縄県大宜味村では9日から13日まで断水が続いたほか、沖縄県国頭村では土砂崩れの影響により、28日現在も一部の地域で停電が継続している。 この大雨により、鹿児島県与論町では「多数の者が生命又は身体に危害を受けるおそれが生じた」ことを理由に11月8日から災害救助法の適用が決定されたが、沖縄県では国への相談が遅れたためにこの基準による適用が見送られることとなった。 【事故】福岡県沖の海上自衛隊掃海艇で火災、沈没し1人不明 [被害]行方不明者1人 負傷者1人 2024年11月10日09:43頃、福岡県宗像市の大島の北方沖約2.3kmを航行していた海上自衛隊の掃海艇「うくしま」で火災が発生した。海自や海上保安庁が消火活動にあたったが難航し、出火から14時間以上経った11日00:05頃に船体が転覆したことで鎮火に至った。その後、掃海艇は11日08:34頃に沈没した。火災発生時、掃海艇に乗っていた約40人のほとんどは海自の別の掃海艇に避難したものの、火元とみられる機関室で作業をしていた30代の隊員1人が取り残され、行方不明となった。また、20代の隊員1人が煙を吸って軽傷を負った。 この火災で、海自は出火から約4時間後の10日14:00頃に「鎮火した」と判断し海保に連絡したものの、約50分後の14:50頃に機関室がまだ燃えていることが判明した。電源が落ち煙が充満していたことで船内の視界が悪く、さらに高熱で機関室に近づくことが難しかったために、確認が不十分なまま鎮火と判断してしまい、結果として被害の拡大を招いた可能性があると報じられている。 【自然災害】石川県西方沖でM6.6、輪島市・志賀町で震度5弱の地震 [被害]負傷者1人 2024年11月26日22:47頃、石川県西方沖を震源とするM6.6の地震が発生し、石川県輪島市と志賀町で震度5弱を観測したほか、東北地方から中国・四国地方にかけての広い範囲で揺れを感じた。 この地震で、石川県津幡町で1人が転倒し、顔に軽傷を負った。また交通機関では、北陸新幹線が富山~金沢駅間で翌27日未明にかけて3時間以上にわたり運転を見合わせるなど、北陸地方の鉄道各線のダイヤが乱れた。 今回の地震について、気象庁は「令和6年能登半島地震」の一連の地震活動としており、今回の地震は1月1日16:10頃に発生した本震(M7.6)に次ぐ規模となっている。一方、今回の地震の震源が1月1日以降の地震活動の領域のさらに西側であったことから別の断層の活動によるものとの見方もある。 ●12月 【事件】福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人が刺される [被害]死者1人 負傷者1人 2024年12月14日20:25頃、福岡県北九州市小倉南区のファストフード店で、レジに並んでいた中学生の男女2人が男に突然刃物で刺される事件があった。刺された2人のうち、腰付近を負傷した男子生徒は一命を取り留めたものの、腹部を刺された女子生徒は死亡した。刺した男は現場から逃走し行方をくらましていたが、事件から5日経った19日午前、現場近くに住む43歳の男が逮捕された。警察によると、防犯カメラやドライブレコーダーの映像を収集し、それらをつなげて足取りを追う「リレー捜査」が逮捕の決め手となった。 この事件の影響で、被害に遭った2人の中学校では16日、臨時休校の措置が取られた。また、市内ではパトロールにあたる警察官が増員され、教員や保護者のほか、市役所職員、地域住民らも生徒らの登下校の見守りにあたる厳戒態勢となった。事件によって不安を感じ登校を控えた児童・生徒もおり、19日までに市内でのべ1万人以上が登校を控え、オンラインで授業を受けるなどした。
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