アリアNISMOのデザインは大人の色気!? 赤いラインの秘密とは?【新型車デザイン探訪】
ドラッグ低減はレーダーとの戦い
NISMOロードカーの空力について、森田氏は「ダウンフォースを高めるためには、その前段階でドラッグを基準車より下げておかなくてはいけない」と語る。ダウンフォースを稼ぐと、往々にしてドラッグが増えがちになるからだ。 フロントコーナーにエアインテークを設け、その気流を前輪表面に流してタイヤ周辺を整流するのは基準車と同じ。”エアカーテン”と呼ばれる空力手法だ。しかしアリアNISMOではインテークを拡大し、エアカーテンの流量を増やすことで整流効果を高めた。 エアインテークを外側に広げたので、その側面の絞り込みが小さくなる。これも前輪周辺の気流を整えてドラッグ低減に寄与する要素だが、「本当ならもっと下まで絞り込まずに行きたかった」と森田氏。インテークの下のコーナー部を指差しながら、「内側にレーダーがある。レーダーのレイアウトを変えるとシステムが開発し直しになるので、ここの面は基準車と同じに保たなくてはいけなかった」 サイドガーニッシュは下端を下げると共に、断面も変えた。基準車では上端で外に張り出し、そこから下は内側に絞り込む断面。それに対してアリアNISMOは赤いラインを挟んだ”く”の字断面にしている。 「前後のタイヤをできるだけフラッシュに結ぶイメージにした」と森田氏。赤いラインの幅方向位置はタイヤ表面とほぼ一致する。ラインから下は内側に少し絞られているが、そこを流れる風が後輪に当たらないように、ガーニッシュの後端には垂直面の出っ張り(空力用語でストレーキ)を設けている。 リヤにはスポイラーを追加した。狙いはもちろんダウンフォースだが、これがドラッグ要因になるので、フロントとサイドでドラッグ低減を図ったわけだ。 「リヤスポイラーは重量制限に収まるようにデザインをまとめるのに苦労した」と森田氏。パワーテールゲートのアクチュエーターが基準車と共通なので、「重すぎると、上まで開き切らなくなる」からだ。「風を受ける面積をできるだけ増やしながら、前後方向の幅を切り詰めるなどして軽く作った」 リヤバンパーでは下端のディフューザーの後端を基準車より延長。サイドガーニッシュの下端を下げつつ外に出したことと相俟って、「床下でダウンフォースを稼ぐ狙い」だという。 しかしリヤのデザインにもフロントコーナーと同じハードルがあった。リヤバンパーの赤いラインから上は、「基準車とほとんど同じ形状」。コーナー部にレーダーが入っているからだ。