2025年は生成AIから行動AIに--UiPath、業務自動化の次なるステップを展望
トレンド3は、端的には、従来のRPAでは実行できなかったタスクがAIエージェントでは実行可能になることだという。「コストやリソースの制約からRPAでの自動化にとどまっていた業務、(RPAの適用範囲を超える)より大規模な業務、人の高度な専門性を必要とした業務にもAIエージェントによる自動化の可能性が広がっていく」(夏目氏) 期待されるAIエージェントのユースケースは、コールセンターでは頻繁に来る内容の問い合わせにAIエージェントが対応し、AIエージェントで難しい高度なケースには人のオペレーターが対応するといった役割分担ができる。物流では、需要予測や在庫管理、配送計画などの一連のオペレーションを各AIエージェントが協調動作して行い、変化にもリアルタイムに対処していく。研究開発では、実験の計画立案や結果分析、仮説の立案、実証などの反復作業をAIエージェントが行い、研究者は手作業で行うよりも効率的に成果を生み出すことができる。 トレンド4は、AIエージェントの具体的なユースケースが生じた段階において、人とAIエージェントによる実際の仕事の進め方を構築することだという。ここでは、人とAIそれぞれの担当範囲や職務、権限、人とAIを組み合わせたプロセスなど業務を根本から再構築することになり、リソースの大規模な再配置を行うことになる。 夏目氏は、2023年の世界経済フォーラムの提言を引用して、AIが人間の仕事を奪うわけではなく、AIを使いこなす人間によって奪われると述べる。AIエージェントを用いた大規模な業務の自動化、業務改革では、まずプロセスマイニングやタスクマイニングなどの手法を使って、AIエージェントで実行可能な作業を洗い出す。次にAIエージェントと人を組み合わせた業務プロセスを設計し、リソースを再配置し、機能するようにしていく。 これには、例えば、AIエージェントへ移行する作業の担当者を別の役割に再配置するため、その人がどのような新しい役割に向いているのか、新しい役割に必要なスキルの過不足はあるのか、新しい役割における適切な評価や報酬などをどうするのかといったさまざまな課題が出てくる。 夏目氏は、人とAIエージェントが協働する未来の仕組み作りにおいて、経営層と人事部門、事業部門の責任者からスタッフまで、システム面で対応するIT部門などによる計画検討からスタートする必要があると解説した。 トレンド5は、企業がAIエージェントを展開していく途上で困難に直面し、本格的な利用の前に断念してしまう恐れもあるという。他方で、ベンダー側は自らの製品やサービスにAI機能の組み込みを進めている。企業や組織が自力で推進する部分とベンダー提供機能を使う部分の適材適所で併用するアプローチが現実的な方法になる。 トレンド6は、組織や従業員のプライバシーやセキュリティを担保して、実際の業務などに即してAIを利用するには、検索拡張生成(RAG)などの新しいツールの組み合わせが必要であることを指す。新しいツールには、現実世界のエンティティーを表現するナレッジグラフ技術や、ナレッジグラフをRAGに適用したGraphRAGなどがあり、組織が独自に大規模言語モデル(LLM)を構築、開発していくことも含まれるという。夏目氏は、「最終的にこうした新しいツールを活用することで、AIが生み出すハルシネーション(誤情報)といったリスクを回避して、高い精度のナレッジを創出できるようになるだろう」と話す。 トレンド7は、AIのリスクや懸念に対処するための地域、国家、国家間における法規制などの整備になる。夏目氏によれば、米国では2024年に約500件のAI関連の規制法案が提出されており、企業や組織の経営層の8割近くが規制強化を求めている調査結果もあるとのことだ。 企業や組織は、コンプライアンスの観点からも各種の規制や要件に対応していかなければならないとし、堅固なデータガバナンスやセキュリティ対策の導入・運用、AIの透明性と説明可能性を確保すること、AIが関与する意思決定プロセスにおける明確な説明責任ができることが必須となってくる。 2024年後半に台頭し始めたAIエージェントは、2025年にテクノロジーとしてさらに進化し、ユーザーとなる企業や組織もビジネスの競争力につながるとして期待値を高めていくと見られる。しかし、その導入から本格展開までには多くの検討項目や準備などを必要とし、場合によってはユーザーがかつて経験したことがないほどの変革にもなることが想定される。また、ユーザーを取り巻く規制や要件なども目まぐるしく変化するだろう。 2025年のAIエージェントの行方は、企業や組織がそのスピーディーな活用に取り組みながら慎重かつ入念な対応にも迫られるという複雑な展開が予想される。