「なぜ企業は大胆変革できない?」経営学者の視点 「エコロジーベースの進化理論」で考えると深く理解できる“驚きの結論”は?
自動車メーカーが、銀行業で成功することは非常に難しい。スーパーマーケットが飛行機を作るのも不可能に近い。 このように企業をひとつの硬直性のある「生物種」と捉えると、「ダーウィンの進化論」が応用できることになる。 結果、業界内における「企業進化のプロセス」が見えてくるのである。 それは「VSRSプロセス」と呼ばれ、次の4つのフェーズに分かれる。 【「VSRSプロセス」のフェーズ1】「多様化」(Variation)
まず1つめは、突然の環境変化などによって、多様な生物種が生まれるフェーズである。 たとえば地球の歴史上では、5億4200万年前から5億3000万年前に発生した「カンブリア大爆発」などが典型だ。 最近のビジネス界でいえば、インターネットの普及でグーグル、アマゾン、ネットフリックスなど、爆発的な数の新しいビジネスが生まれたり、スマートフォンの普及によりおびただしい数のアプリのベンチャー企業が登場したことが該当する。
2023年から世界的に注目されている生成系AI技術は、いま世界でAI関連ベンチャー企業の「カンブリア大爆発」を引き起こしている最中といえる。 【「VSRSプロセス」のフェーズ2】「選択」(Selection) 2つめは、多量に生まれた生物種の中で、時の環境に適応したわずかな種だけが自然界に選ばれ、生き残るフェーズだ。それ以外の種は淘汰される。 たとえば首の長いキリンは、アフリカの草原で高木のアカシアの葉を食べることができた(アカシアは栄養価が高い)。
他にアカシアを食べることができるライバル種がいなかったので、キリンは現代まで生き残ったという説が根強い。 アフリカの環境に、キリンは選ばれたのである。 企業でいえば、多様な技術・アイデア・ビジネスモデルの中でも、顧客ニーズなど時のビジネス環境にマッチした企業だけが選ばれ、他は淘汰されていくということだ。 ■生き残った企業は「社会的正当性」を得ていく 【「VSRSプロセス」のフェーズ3】「維持」(Retention)