’19熊本西/4 躍進 大敗からの成長曲線 /熊本
<第91回選抜高校野球> 「実力では出場32校中32番目」。21世紀枠での選抜出場が決まった際、横手文彦監督(43)は現在のチームをそう評した。しかし、昨秋の熊本大会準優勝、九州大会8強の戦績は実力本位で選ばれた一般選考の29校と比べても見劣りしない。地域での清掃活動や子供相手の野球教室など21世紀枠ならではの特色が衆目を集める一方、秋の戦いぶりにも目を見張るものがあった。 熊本西は1985年夏の甲子園で1勝した歴史があるものの、現在の2年生が入学した2017年春以降、春・夏・秋の熊本大会で勝ったのは昨春の1回のみ。秀岳館や城北、専大玉名といった近年の甲子園出場校に1、2回戦で敗れる大会が続いた。 「一つ上の学年のチームの方が力は上だった」。横手監督がそう言う現在のチームも厳しい船出だった。 前チームの正捕手だった霜上幸太郎主将(2年)がかねて切望していた投手に転向して伊藤惇太郎捕手(2年)とバッテリーを組んだが、8月に強豪・熊本工との練習試合で2-13と大敗。しかし、そこから自分たちも驚く成長曲線を描いていった。 昨秋の熊本大会。破竹の快進撃は下位打線の一打から始まった。初戦の牛深戦、双方無得点の四回裏2死満塁で打席に立った9番・末永駿選手(1年)が走者一掃の適時二塁打。七回には8番の伊藤捕手、9番に入っていた水無瀬亮佑選手(2年)に連続適時打が出てコールド勝ちした。 横手監督がポイントに挙げたのが準々決勝の菊池戦。18日前の練習試合で九回、5-2から逆転されて敗れた相手だ。この試合も八回を終えて4-2と似た展開だったが、走者を出しながらも九回を守り切った。重圧から足がつる選手が続出したが、横手監督は「あの中で勝てたことは自信になったと思う」と振り返る。 そして、準決勝は8月に大敗している熊本工戦。勝てば初の九州大会出場が決まる大一番は一回、1点を失ってなお2死満塁のピンチを切り抜けると、二回に9番の久連松(くれまつ)祐也選手(2年)の2点二塁打などで逆転して4-1とリードした。 その後は点を取り合いながらじりじり追い上げられた。6-4の九回裏、2死から連打で1点差に迫られランナー三塁、打席に4番を迎える大ピンチ。しかし、マウンド上の霜上主将は臆することなく外角への速球で遊ゴロに打ち取った。 甘い球を痛打された練習試合とは別人の150球の熱投。決勝は熊本国府に打撃戦で敗れたが、九州大会でも佐賀学園(佐賀)に勝って躍進を遂げた。