「スポハラ」相談急増、きっかけはバスケ部主将の自殺…「責任をとれ」「丸刈りに」退部して転校も
スポーツの現場で指導者による暴力やハラスメントなどの被害が後を絶たない。日本スポーツ協会(JSPO)は「スポーツ・ハラスメント」(スポハラ)と定義しており、相談件数は昨年度、485件と過去最多を記録。近年は暴力に代わって暴言やパワーハラスメントの割合が高まっており、根絶に向けた取り組みも広がりつつある。(長沢勇貴、土谷武嗣)
きっかけはバスケ部主将の自殺
JSPOは暴力や暴言のほか、言葉や態度による人格の否定や威圧などをスポハラと捉え、2013年に根絶を宣言した。大阪市立(現・府立)桜宮高校で顧問に体罰を受けたバスケットボール部の主将が12年に自殺したことがきっかけだった。 JSPOへの相談件数は窓口開設当初の14年度に23件だったが、年々増え、23年度は前年度比2割増の485件に上った。相談内容は暴言が最多の39%で、パワーハラスメントが22%、暴力は10%だった。被害者のうち小中高生が67%を占めた。
指導とは言えない
最近は指導者による丸刈りの強要を訴えるケースが目立つ。関西大北陽高(大阪市)のハンドボール部では3月、監督らが部員に丸刈りを強要したことなどが判明。岐阜県立池田高では、運動部の監督が22年に部員らに「全員丸坊主にするか」と発言し、部員の大半が丸刈りにしたという。大阪府豊中市立中のハンドボール部でも21年、当時の部員が顧問に丸刈りを強要されたと保護者から訴えがあり、市教育委員会が調べている。 大阪体育大の土屋裕睦教授(スポーツ心理学)は「暴力はいけないという意識は浸透しつつあるが、チームを強くしたいとの思いから暴言を吐くケースが増えている。丸刈り強要などのハラスメントも生徒の心を傷つけ、指導とは言えない」と指摘。「地域クラブの指導者には教員免許のような資格がないため、適切な指導を学ぶ環境を整える必要がある」と話す。
根絶へ検定や講習会
元ラグビー日本代表の平尾剛・神戸親和大教授(スポーツ教育学)は3月、一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」(神戸市)を設立した。今夏から人権などの知識を問う検定事業を始める予定だ。平尾教授は「多忙で新たな指導方法を学ぶ時間がない教員も多い。保護者や子どもらにも正しい知識を学ぶ機会を提供したい」と語る。 大阪府バスケットボール協会は今年度、指導者と保護者がハラスメント防止の講習会に出席することを小学生年代の大会参加要件に加えた。従来はどちらかが参加すればよかったが、双方の意識向上が不可欠として厳格化したという。