【インボイス未登録】「免税事業者だけど、請求書に“消費税”を記載していいの?」…税理士が〈免税事業者の請求書の作り方〉を徹底解説
「免税事業者による消費税の請求書記載」に関する国の見解
国は消費税が導入された当時から、免税事業者が消費税を別請求してもよいのか?という問題について、「消費税の仕組み上、免税事業者が消費税を別請求することは予定していない」と具体的な回答を避けてきました。 別表記するのはおかしいと匂わせつつも、別表記してはダメとまでは言わず、特に規制もしませんでした。 予定していなくても、現実に免税事業者が請求書に消費税を別表記するのが商慣習となっていたわけですし、それでも良いのか悪いのか、明確な回答をして欲しかったのですが…良くも悪くも見て見ぬふり、黙認していたような状態でした。 インボイス制度の開始が決まり、「インボイス(適格請求書)ではない免税事業者の請求書にこれまでどおり消費税を別表記してもいいのか?」「インボイスに似せた書類(インボイス類似書類)を発行するのは禁止されているのでは?」という問題が当然発生したわけですが、そのときも国はこの問題について具体的に触れず、私たち税理士も推測でアドバイスせざるを得ませんでした。 しかし、さすがに問い合わせが多かったからか、インボイス開始後の令和5年11月13日に公表された国税庁の「お問い合わせの多いご質問」の中で、次のような具体的なQ&Aを示してくれました。 ------------------------------------------------ 【お問い合わせの多いご質問:問(4)(一部抜粋)】 ・問(4):免税事業者はこれまで出していたような請求書や領収書等を交付することはできないのでしょうか。 ・答:免税事業者が請求書等に消費税相当額を記載したとしても、それが適格請求書等と誤認されるおそれのあるものでなければ、基本的に罰則の適用対象となるものではありません。また、免税事業者であっても、仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは適正な転嫁として、何ら問題はありません。 ※引用:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf) ------------------------------------------------ このように、請求書に消費税相当額を記載したとしても、インボイス(適格請求書)と誤認されるようなものでなければ罰則はないと、私が知る限り初めて、免税事業者が消費税相当額を別表記しても問題はないと明言してくれました。 また、仕入の際に消費税相当額を負担しているのだから、売上の際も消費税相当額を上乗せ請求して問題ないと、こちらもある程度は明確な見解を示してくれました。 ただし、あくまで仕入時に負担した「消費税相当額」を記載してよいと書いているだけなので、単純に売値に10%をかけて「消費税」として別表記することを公認してくれたわけではなさそうです。 とはいえ現実問題として、毎回仕入時に払った消費税を集計して上乗せ請求するのは不可能です。 個人的には仕入時に10%消費税相当額を上乗せして支払っている(相手が免税事業者や一般消費者でない限り)のだから、売上時にも10%消費税相当額を上乗せ請求するのが一番合理的でわかりやすいと思います。 ただそうすると売上で受け取る消費税相当額の方がどうしても多くなってしまうので、益税が発生するという批判が出てしまうため、国も消費税相当額の計算方法については明言を避けたのでしょう。 そもそも売上1,000万円以下の小規模事業者の事務負担を軽減するために免税という制度を設けたのだから、どうせ消費税相当額の上乗せ請求を認めるのであれば、堂々と消費税分10%として別表記してよいと公認して欲しかったのですが。