診療科の偏在も課題 美容医療が急増、外科は減
医師数の偏りは地域だけでなく診療科間でも生じている。 ワーク・ライフ・バランスを重視する若手を中心に、美容医療に従事する医師が急増する一方、外科などは減少傾向が続いている。 厚生労働省によると、美容外科に従事する医師は2012年には444人だったが、22年には1247人と2.8倍に増加。20~30代が約半数を占める。一方、外科は同じ期間に2万8055人から2万7634人へと微減した。 美容外科の診療所も急増している。同省によると、23年10月時点で美容外科を掲げる診療所数は2016施設で、20年10月時点の1404施設から約4割増えた。増加率は43診療科目の中で最も高かった。一方、小児科は1020施設(5.4%)、外科は632施設(5.1%)減った。 背景には、最近の若手がワーク・ライフ・バランスを重視し、激務を避ける傾向がある。美容医療を手掛けるクリニックは1年目から年収2000万円を得られるケースもある。美容医療は残業も少ないとされる。厚労省の若手医師への調査では、外科を選択しなかった理由として「ワーク・ライフ・バランスの確保が困難」とした割合が最も高かった。 厚労省は対策として、保険診療を扱う医療機関を開業する際、3年以上の保険診療経験があることを要件とするルールを作る。ただ、美容診療のみを扱う病院は対象ではないため、効果は不透明だ。厚労省は、必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくりなど、処遇改善に向けた支援も検討する。