1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選。いすゞの「NAVi-5」は今!?
そこがクルマの楽しさである
クルマの基本は、1960年代に完成した、と、言われている。シャシー構造、サスペンションシステム、エンジン、変速機、パッケージ……。これらは。2020年代になっても、大きく変わっていない。 でも、ときどきとってもユニークなアイディアが飛び出してくる。そこがクルマの楽しさだ。 1980年代には、“珍品”と切って捨ててしまうには惜しい技術も多く登場した。1990年代には“1台商業的に失敗すると会社が傾くほどのダメージになる”などと言われたが、1980年代は各社余裕があったのだろう。 理想主義的な技術がけっこう惜しげもなく、という感じで投入された。
(1)トヨタ「ソアラ」(2代目):イージーアクセスドア
トヨタ自動車が1986年に発売した2代目ソアラは、新しい技術を“どっさり”というかんじで搭載したモデルだった。電子制御エアサスペンションをはじめ、すべてのガラスが三次元ガラス。当時、多くのクルマはサイドウインドウが平面ガラスだった。 さらに、目の焦点を合わせやすいとされた「スペースビジョンメーター」、ナビゲーションシステムのはしりともいえる「エレクトロマルチビジョン」、液晶パネルをタッチ操作する「マルチコントロールパネル」といった具合。 そのなかでも、いまもあれば便利なのに……と、惜しむ声が少なくないのが「イージーアクセスドア」だ。「狭いスペースでもスムーズな乗降を可能にした」と、トヨタが謳う凝った設計のドアだ。ヒンジに4つのリンクを使うことで、一般的なヒンジと同じようにドアを開けても、開口部を大きくとることが可能になっている。 2代目ソアラのイージーアクセスドア、よく思いついたものだと思う。ただし、ソアラがモデルチェンジしたときに、継続採用されなかったのは、おそらく衝突安全の基準が厳しくなったためではないかと思われる。ヒンジにおいてはより強い強度が求められたのだろう。 シートは8ウェイの調節式であり、見た目もヘッドレストレイント(ヘッドレスト)と一体型になったようなハイバックタイプで、見た目も新しく、かつ贅沢な印象だった。限定発売された「エアロキャビン」はルーフに大きなガラスがはめこんであり、車内の居心地のよさが強く感じられた。 イージーアクセスドアを含めて、クルマに乗ることが楽しくなるような気配りを随所に感じさせたソアラ。いまでも「3000GTリミテッドターボ」が見つかったら欲しい。ずっと欲望を刺激するクルマである。