ダンス・ドローン・AI 介護給付費を削減する自治体の挑戦【WBSクロス】
WBSクロス、今回のテーマは「介護給付費」です。介護が必要な高齢者を社会全体で支える介護保険制度。その財源は介護給付費と呼ばれます。その費用を負担しているのは半分が40歳以上の現役世代と65歳以上の高齢者が支払う「介護保険料」で、そしてもう半分は国や自治体などが負担しているんです。高齢化が進む中、自治体が将来の介護給付費を減らすために動いています。 往年のディスコチューンに合わせて踊る高齢の男女。平均年齢は68歳、一体何をしているのでしょうか? 「体重が5キロぐらい痩せた。体脂肪率も15%台ぐらいまで落ちた」(参加者) 体重管理以外にもメリットがあります。 「もともとは全然知らない方ばかり。知り合いになれるのが楽しい」(別の参加者) 実はこれ、愛知・豊田市が行っている健康維持のためのプロジェクト「ずっと元気!プロジェクト」。健康な高齢者を増やすことで、介護給付費の削減に繋げようとするものです。 「運動だけではなく、趣味・エンタメ、カラオケでもいい。いろいろなプログラムをたくさん用意」(豊田市役所・未来都市推進課の清水智哉課長) ダンスを踊る「じーちゃんばーちゃんレボリューション」だけではなく、若者が弁当を届け一緒に会話しながら食べる「じーばーイーツ」、さらにはドローン教室など、他にはないユニークなプログラムが60種類以上用意されています。なぜ実現したのでしょうか? 「ソーシャルインパクトボンドで民間の方の力を借りることで、あらゆる分野の人材をカバーできることが一番のメリット」(清水課長)
ソーシャルインパクトボンドとは、行政と民間が連携して社会課題を解決する仕組みです。まず行政と中間支援組織で成果報酬型の契約を結びます。資金は個人や企業などから投資を募ります。中間支援組織が有効なアイデアや技術を持つ事業者を選定し、事業を実施。目標以上の成果が上がれば、コスト削減分の一部が投資家や中間支援組織などに償還されます。 豊田市の場合、事業者も成果が上がると報酬も増えるため、果敢に事業内容の改善に取り組みます。 「80代の人には刺さるが、70歳の人には刺さらないこともある。いいもの(プログラム)は残り、良くないものはなくなっていく」(働く人の笑顔創り研究所の坂元玲介さん) プログラムを充実させたことで、開始当初わずか37人だった参加者は今では5800人にまで拡大。参加者へのアンケートでは、運動量や生活習慣が改善したとの回答が多く、将来発生する介護費用が1人当たりおよそ9万円減ったといいます。 その結果「(開始から)2年の段階で(将来の介護給付費)約3.7億円の削減効果」(清水課長)といいます。 豊田市と契約を結んだ中間支援組織のコンサルティング企業「ドリームインキュベータ」。既に8つの自治体とソーシャルインパクトボンドの活用について覚書を結び、今後も拡大する方針です。 「今ある社会課題をきちんと解決する。政府とか行政の力だけでなく民間の力も入れながら創意工夫をし解決していくような形になるのが理想。(ソーシャルインパクトボンドは)これからスタンダードになっていく」(ドリームインキュベータの吉田泰治執行役員)