スマホ時代、子どもに必要な情報モラルとは? LINEみらい財団が無償で行う「情報モラル教育」
“自分ごと”をテーマに、他者との関わりを見つめ直す
――LINEみらい財団での情報教育は、どのような経緯で始まったのでしょうか。 西尾さん(以下、敬称略):そもそも財団が誕生したきっかけは、2011年にLINE株式会社(現・LINEヤフー株式会社)がコミュニケーションアプリの「LINE」をリリースしたことにあります。LINEは現在多くの人に利用されており、日本国内では社会インフラと言っても差し支えないほど普及しています。 LINE利用者がトラブルに遭わないよう、社会的責任を果たす企業のCSR活動(※)として、2014年頃から教育活動を始め、2019年にLINEみらい財団が立ち上がりました。 ※企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとると共に、説明責任を果たしていくことを求める考え方 ――具体的に「情報モラル教育」ではどのようなことを教えているのでしょうか。 西尾:2023年に弊団体で学校現場における情報モラルについて個別指導が必要だったものを調査したところ、一番の問題は「スマホの長時間利用による生活の乱れ」で、その次に「メッセージアプリやSNSなどでの悪口やいじりによる問題」が挙げられます。 私たちとしてはそうした教員や保護者、そして子どもたちが抱える問題を改善すべく、出前授業やWebサイトでの教材提供を通じて、インターネットとの付き合い方や、上手なコミュニケーションを学べるような取り組みを行っています。 ――「情報モラル教育」と聞くと、ネット犯罪や対人トラブルの注意啓発が思い浮かびますが、そこだけではないということですね。 西尾:その通りです。もちろん、子どもたちがスマホやインターネットに早期に携わるようになり、そうしたトラブルに巻き込まれやすい環境にあるのは事実です。そういった啓発活動も行っていますが、私たちはSNSなど「ネット上のコミュニケーション」を主眼とした問題解決に重きを置いています。 コミュニケーションのすれ違いによって、相手を誹謗中傷してしまうことがあります。ですから、子どもたちにいきなり犯罪の注意啓発を始めるのではなく、インターネット上のコミュニケーションの特性を、いかに自分ごととして感じてもらえるかをテーマとしているんです。 ――“自分ごと”という言葉が大きなキーワードですね。出前授業では具体的にどのようなことを教えているのでしょうか。 西尾:小学3年生から高校生までを対象に、成長段階に応じて子どもたちが身近に考えられる事例や場面設定をした教材を使ったグループワークを実施しています。 例えば「ネットを何時間していたら『使い過ぎ』だと思う?」といった質問項目があります。2時間でも使い過ぎという人もいれば、4時間が使い過ぎだと感じる人もいますよね。正解を出すのではなく、子どもたち同士で議論を行い、学びを深めてもらうような形にこだわっています。 塩田(以下、敬称略):議論を経て、利用状況やネットとの付き合い方に向き合うことで、より自分事として考えることができます。リスクをどう捉えてどのように考えていくか、それができないと行動変容は起きないので、教材を作るときもその点は強く意識しましたね。 小学3年生だとまずは身の回り、自分のリスクをメインに扱い、高校生だと自分だけではなく社会的なリスクに対してどういうふうに考えていくか、というように、幅を持たせた伝え方をしています。 ――一方的に「スマホの使い過ぎはだめだよ」などと言っても、子どもたちに深く理解してもらうことは難しいですよね。 西尾:その通りです。ひとえに白黒はっきりつけることができる問題でもないので、どちらが正しいか間違っているかではなく、コミュニケーションによる根本的な他者理解と自己理解を深めてもらえることを目的としています。 特にコミュニケーション上のトラブルは、最悪の場合、自殺につながってしまったり、犯罪に近い領域になってしまったりすることもあります。まずは日常的にスマホやSNSを利用する上で、楽しく便利に使うために気をつけたいことを、教材の中で伝えていきたいと思っています。 保護者や教員の方にも学んでもらえるような教材も用意しています。