高架道路を「空中公園」にできる? 名古屋で転用目指す動き
ニューヨークの「ハイライン」参考に
住民がイメージしているのは、すでに完成している高架や橋脚などはそのままにして、路面を緑化して散策路などを設けた公園。米ニューヨークの「ハイライン」を参考にしたそうです。 ハイラインは1980年に廃線となった貨物鉄道の高架線を、市や民間資金によって再生した例。2009年に第1区間が完成して以来、今年9月に第3区画などがオープンし、約2キロの廃線のほとんどが公共空間として活用されました。ニューヨークタイムズによると、年間500万人が訪れる人気スポットとなっています。 「相生山のハイライン」を提案する「相生の里山連絡会」共同代表の高岡立明さんと動物写真家の小原玲さんは「今までの費用がムダにならず、都市の人と自然の新しい共存の形として話題になるでしょう。『計画通り道路を通すか、中止して取り壊しか』ではなく、『道路か、公園か』という選択肢にしてほしい」として、この提案を含めた要望書を河村市長あてに提出。今年6月の市議会でこの問題が触れられましたが、市道路建設部長は「都市計画が変更されない限り、他の用途への活用を検討するつもりはない」と一蹴する答弁をしました。担当者も「道路部局と公園部局をまたぐ大がかりな調整が必要で、今の時点ではとても考えられない」と首を振ります。
実現すれば老朽インフラ活用に一石
国土交通省街路交通施設課も「都市計画道路を公園に用途変更した例は聞いたことがない」とした上で、「道路法に基づく道路としての廃止、変更の手続きを都市計画審議会などにかけながら、都市公園法に基づく公園に位置づけを変更するといった手続きが考えられるだろうが、公園として誰がどう管理するのかなどの面で非常に難しく、時間が掛かるのは間違いない」と指摘します。
確かに夢のような話かもしれません。しかし、現実には廃路線や役割を終えたような道路は全国各地にあります。同じ愛知県でも小牧市の新交通「ピーチライナー」は採算悪化で2006年に廃線となり、約7キロの高架が放置されています。住民からは撤去以外にサイクリングロードにしたり、太陽光パネルを敷き詰めたりしてはどうかなどの提案がありますが、具体的に決定している動きはありません。 都市計画に詳しく、相生山の第三者委員会にも加わった名古屋工業大学の秀島栄三教授は「公園化は費用対効果があるならばいい案でしょう。ずるずると引き伸ばすのが最も悪いことで、こうした手法が住民の多数の合意を得られた上で、行政がスムーズに動く制度的な改正も求められます。そうなれば老朽化したインフラのあり方に新たな可能性が生まれるのでは」と話します。 ニューヨークのような成功例が日本に生まれるために、近道はあるでしょうか。 (関口威人/Newzdrive)