『プリシラ』ソフィア・コッポラにインタビュー
──監督はデビュー以来、若い女性の葛藤を描き続けています。ただ『ヴァージン・スーサイズ』などの初期作では、その葛藤の理由はあえて曖昧にされていたように思いますが、近年の『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』や、今回の『プリシラ』では、主人公が何と闘っているのかが明確になってきています。この変化をご自身としてはどう思いますか? 「すべて意識しているわけじゃないけど、いい指摘ですね。作品をあるテーマに沿って発展させるためには、新しい観点を取り入れるようにしています。『プリシラ』では若い女性の視点のみならず、10代の娘を持つ母親の視点にもフォーカスしていて、私にとって初めての試みでした。それはおそらく、私自身にも今10代の娘がいるから。自分の人生の現在地に基づいたアプローチをしたんです」 ──女性の眼差しで描かれた映画は増えつつありますが、監督はそのパイオニアです。女性の映画を撮り続ける理由は? 「それが自分の経験でもあり、興味を持てるから。映画を作る上では、物語に共感できるかどうかが大事です。でもそれとはまた違う形で、男性キャラにシンパシーを感じることもできます。『SOMEWHERE』(10)のスティーヴン・ドーフや、『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイには、自分の欠片を見つけられましたから」 ──監督は以前から「メインストリームよりも、オルタナティヴなカルチャーに共鳴する」と公言しています。大作映画の監督オファーを断った過去もあるそうですが、「共感できる物語を伝える」という姿勢を貫くことで、何を得たと思いますか? 「私にとって、自由にクリエイトできることは本当に重要なんです。思い通りの作品に仕上げるためには、むしろ小規模のプロジェクトの方が都合がいい。もちろんクリエイティブな解決策を見つける必要があるけれど、それも腕の見せどころというか、楽しみのひとつなんです。無限に予算がある場合、直球で物事を進められるという意味では楽かもしれないけど、ビジネス性が強くなり、表現面でどうしても妥協せざるをえないし、芸術としての意味合いが薄れてしまう。だから、これまで歩んできた道になんら後悔はありません。やりたいように仕事ができていることを幸運に思いますし、思い描いた通りの作品を撮ってきたと感じています」 ●ソフィア・コッポラ 映画監督。監督作に『ヴァージン・スーサイズ』(99)、『ロスト・イン・トランスレーション』(03)、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(17)など多数。 ●『プリシラ』 4月12日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。エルヴィスを演じるのは、オーストラリア出身の新鋭ジェイコブ・エロルディ。 Text_Milli Kawaguchi
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