上田麗奈がたどり着いた“本当の優しさ”とは 「聞いてみないとわからないことがある」
「(キャラの気持ちの)大きいも小さいも、きっと私の中にもあるんです」
ーーそんな人好のキャラクターについてどう思いましたか? 上田:人好くんは、その名前の通りすごくお人好しな人ですよね。彼のツッコミとか対応の仕方とか、倫理観や常識的な部分があるからこそ、親近感を感じられるし、理解もできる。例えば、一回謝罪したシーンとかも、すごく共感できる部分でした。でも、そんな共感できるキャラクターでありながら、同時にすごく懐の広さを持っているんです。困っている人を助けたいとか、悲しんでいる人を喜ばせたいとか。人への思いやりがとっても強いキャラクターなんです。「こんな人がいてくれたら、誰でも受け入れてもらえるのかな」とか「このままの自分でもいいのかも」と思わせてくれる、安心感をくれる存在。人好くんだからこそ、雪さんのクールな外見の奥にある優しさを引き出せるところがあるんじゃないかなと思うくらい。彼の存在そのものが、雪さんがあったかいところを見せるきっかけになっているような気がします。 ーー上田さんの感情を抑えた演技と、雪が好物の勝田ソースに出会った時のテンションの高さなど、感情のジェットコースターのような演技が印象的でした。雪さんを演じるにあたって、暗いところと明るいところのギャップをどのように表現しようと考えられましたか? 上田:暗いところに関しては、雪さんがこれまで歩んできた道のりがすごく影響しているんだろうなと考えました。暗殺者として生きてきた経験があるからこそ、特に序盤は「少しロボットっぽい喋り方をして」というディレクションもあったんです。それって自分の意志や気持ちを大切にというよりも、与えられた指示をただ実行するような生活をしてきたからなんじゃないかと。一方で、雪さんの本質ってすごく温かい人なんですよね。「人のために何ができるだろう」と考えて、人の喜びが自分の喜びになるような、そういう柔らかさを根っこに持っているんです。だから、クールな外見と温かい内面のバランスを意識しながら演じていました。 ーー他に雪を演じる上で大切にしたことはありますか? 上田:雪さんの素直さもすごく大切にしました。クールに見えても、人と関わっていく中で少しずつ変化していくんです。自分の気持ちにも相手にも誠実で、本当に真面目。そういった雪さんの素直さを一番大事にして演じるよう心がけました。 ーー上田さんが演じられるキャラクターは、悲しい過去がありつつ、素敵な人と出会って、元々あったかわいいところが花開くキャラクターが多い気がします。 上田:そうですね。自信がなかったりとか、自尊心が低かったり。その大きいも小さいも、きっと私の中にもあるんです。だから理解できることも多いし、演じるのは大変だけど、やりがいも感じています。 ーーこの作品は、雪さんのチャレンジを見守る周りの人々の温かさも描かれています。先ほどの熊谷さんのお話も踏まえ、現場の雰囲気もそれに通じるものがあったのでしょうか? 上田:そうなんです。特に監督がすごく優しくて、いつも現場を優しく包み込みながら盛り上げようとしてくださる方でした。今回は音響監督さんがいらっしゃらなくて、渡辺(歩)さんが全てのディレクションを担当されていたんですけど、度々ブースに入ってきてディレクションしてくださっていました。その時に、ちょっとした冗談やギャグを交えながら、和やかな雰囲気を作ってくださったんです。時には「これだと今の若い子たちには分からないかな」なんて言いながら(笑)。監督のおかげで、フレッシュなメンバーも多かった中で、柔らかい空気が流れる現場になっていたと感じています。