元レースクイーンが社会人歴ゼロから就職。「入社4日で辞めたくなったけど」課長に昇進するまで
将来の不安から一般企業へ就職。最初の業務は…
こうしたなか、レースクイーンの先輩たちが20代後半に入ると、ネイルサロンやモデル事務所の経営者になったり、結婚して家庭に入ったりしていくのを見て、「将来に対する不安を漠然と抱えるようになった」と加賀さんは言う。 「レースクイーンはいつまでもできる仕事ではなく、アルバイトも社会人経験もなかった自分にとって、『この先どうなるんだろう?』という気持ちがあって。心機一転するためにも、レーシングチームの車両だった『Kawasaki』の本社がある兵庫に引っ越しを決めました。 関西では何の仕事のアテもなかったので、いろんな求人を探していくなかで三陽工業を知りまして。家から近かったこともあり、まずは応募してみることにしたんです」 当初は営業として採用されたそうだが、上司が和やかな雰囲気を作ろうと、TV番組『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の人気企画「絵心ない芸人」に関する話題を挙げ、加賀さんにキリンのイラストを描かせたという。 そうすると、思いのほか“絵が上手い”ことがわかり、入社初日の業務はタウンワークに載せる三陽工業の求人募集に使うイラスト制作を行うことになったそうだ。翌日からはパソコンとペンタブを用意して、本格的にイラストを作ることに。 「製造派遣事業を強化していく上で、『ホームページのデザインも刷新したい』ということだったため、コンテンツに載せるブログやSNSを始めたのに加え、社員のイラストや写真素材などを私の方で用意し、サイトを構築してもらう外注先とのやりとりも行いました。どの業務も未経験だったので、本当にイチから情報収集しながら取り組んでいましたね」
社会人の“ツラみ”を経験「入社4日目で辞めたくなった」
だが、「働き始めたときは“違和感”だらけだった」と加賀さんは吐露する。 「ずっとレースクイーンの仕事をしていたのもあって、どうしても固定給を時給計算してしまう自分がいました。そのほか、クライアントとのメールや電話対応など、本当に何もかもが初めてで、社会人の何が正解かもわからない状況でした。 実は入社4日目で『会社を辞めたい』と言っていたんですね。自分のスキルがそこまでないのに、40時間分の“みなし残業”が月給に含まれているのが納得できなくて。そんな自分に対して、みなし残業ではなく残業した分だけを給与に反映されるように柔軟な対応をしてもらったりと、会社側に融通を効かせてもらえたのは本当に感謝しています」 こうした苦労を乗り越え、加賀さんは社内のイラストやホームページ制作、ブログやSNSの運用など、三陽工業の広報業務を担っていく。 会社のパンフレット制作や備品のデザインまで任されるようになると、リソース不足を補うためにアシスタントを雇い、広報部署のまとめ役としても社内からの期待を背負うようになっていった。現在は広報チームに新入社員が2名加わり、パートで働くスタッフも含めて4名のメンバーを束ねている。 こうしたなか、加賀さんの守備範囲は広く、広報業務の基本となるプレスリリース作成やメディアリレーション以外にも、YouTubeの動画編集やデザイン、イラスト制作、SNS運用など「やれることは全部やる」というスタンスを持っている。 まさに“スーパー広報”として、日々忙しく立ち回っているわけだ。 「SNSには力を入れており、特に2018年から始めたYouTube『かがっちャンネル 三陽工業公式TV』はチャンネル登録者数が1.3万を超えています。スポンサー先のバイクレースの動画や自分がバイクに乗って走る動画などを投稿することで、徐々に再生数が取れてきて、チャンネル登録者数が増えてきました。 そして、2020年くらいからショート動画も投稿するようになり、いくつかバズった動画が拡散されて、フォロワー獲得や認知度向上につながりましたね」