「しみじみうれしい」第168回芥川賞の井戸川射子さん会見(全文)
受賞の喜びを自身の中でどう位置付けるか
記者:この受賞は、誰かが見守っていてくれたからというような、なんかご自身の実感みたいなものっていうのは。 井戸川:ああ、そうですね。あんまり神様を信じてるというような感じではないので、でも、私は死んだおじいちゃんが守っててくれてると思ってるので、死んだおじいちゃんが見守ってくれたかもしれないですね。 記者:最後に、タイトルにもあります「喜び」ですけれども、わりと生活の中の小さな喜びみたいなものを積み重ねて書かれた作品だと思いますけれども、今回のこの受賞という大きな喜び、あらためてご自身の中でどう位置付けられているか伺えればと思います。 井戸川:やっぱり誰かに、褒めてもらおうとか、そういうことを誰かにしてもらおうっていうふうに思うとやっぱりしんどいので、私は上手に自分の書きたいものが書けたなというふうに思って。でもこれがすごく、今回の受賞が励みになるので、またうまく書いていこうって思います。 記者:ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。では次の。はい、じゃあ一番後ろの方、はい、どうぞ。
詩と小説ではつくり方がどう変わるのか
記者:ニコニコ動画の高畑と申します。ご受賞、おめでとうございます。恒例の質問なんですけれども、ニコニコ動画はご存じでしょうか。 井戸川:はい、いつも芥川賞のとき見てます。 記者:あ、ありがとうございます。では、ユーザーから届いた質問を代わりに聞きたいと思います。静岡県30代女性の方からの質問になります。井戸川さんは小説のほか詩人としても印象的な作品を多く残していますが、詩と小説ではつくり方がどのように変わりますか。また、今回の作品に登場する少女に詩集を薦めるとしたら何を薦めますか、その理由も知りたいです。 井戸川:そうですね、詩と小説の違いっていうのはすごく、諸説ありっていう感じで、純文学と大衆小説の違いとかもいろいろな分け方があると思うんですけど、私の中では、外国の作家で、詩は叫びに近いものであるみたいな言い方があって、ああ、それは本当そうだなと思って。詩は叫びだなと思って。小説は、でももうちょっと長かったりストーリーがある分、叫びでは、そんなに長く叫びは聞いていられないし、叫びもそんなに長くは続けられないような、そんな気がして。だからそこがちょっと違うのかなと思います。でも詩はすごく自由に書けるというか、助詞を、どんな助詞を使っても、別に文句を言われないというか、そういう自由さがあって私は楽しいですね。 少女に詩集を薦めるなら。そうですね。じゃあ私の詩集の、『する、されるユートピア』を薦めますね。 記者:ありがとうございます。 司会:はい、続いて。はい、じゃあ前の女性の方。