「しみじみうれしい」第168回芥川賞の井戸川射子さん会見(全文)
当時の自分に言葉を掛けるとしたら?
記者:朝日新聞の【田中 00:20:33】と申します。このたびは、ご受賞、おめでとうございます。先ほど二人称のお話がありましたけれども、ご自身、出産と育児で、誰かに見守っていてほしいという思いで今回この手法で書かれたということですが、こうして形になって、今日、芥川賞を受賞されたということで、何か当時しんどかったご自分に言葉を掛けるとしたら、どんなことを伝えたいなというのがあれば、教えてください。 井戸川:育児もまだ全然始まりの始まりでまだまだなんですけど、そういうふうに見守られたいって思って書いて、で、その書いたものが読者の方々にすごく見守ってもらってたなと。私、すごい、エゴサーチとか全然しないほうなんですけど、今回はちょっとしてみて、すごいいろんな二人称の読み方とかしてくださってて、ああ、こういう見守られ方がある、間違いなくあって、それはすごくやっぱりうれしいと思いました。 記者:ありがとうございます。あと、詩と小説と書かれて表現の幅を広げてこられましたが、何かこれからの抱負というか、こういう表現に挑戦したいとか、こういうテーマを書いてみたいとか、そういうのがあれば教えてください。 井戸川:1個ずつ、書くたびに、いろんな新しいことを、自分の中では新しいって思う、この言葉を使うとか、これは使わないとか、そういうのを考えて書いています。で、多くの人に読まれたいとか、そういうのは副次的なものというか、私は本当に一番の目標は言葉を上手に使いたいなと思っていて、それができるようにやっていきたいなと思っています。 具体的には、そうですね、やっぱりなんか社会での憤りとかあるじゃないですか。でもそれを、ちょっと長いの書いてみたくて、そのまま書いてもちょっとしんどくなっちゃうと思うんですよ、憤りが長く続いちゃうと。だから、やっぱり何かに仮託して書くっていうのがこれからしていきたいですね。 記者:ありがとうございました。 司会:はい、ありがとう。続いていかがでしょうか。はい、どうぞ。