プロへの扉であるM15大会を新設した岩渕聡氏、選手育成のための“3つの目的”を語る<SMASH>
「自分の選手キャリアのスタートを思い出した時、その大切さをすごく感じたところがあって」と、岩渕聡氏は言った。 【画像】目指せ、世界の頂点!全仏オープンに出場した日本人男子選手たち テニスの強豪・柳川高校時代に国内タイトルを次々に獲得した岩渕氏は、卒業と同時にプロ転向。ジャパンオープン複優勝などの戦果を挙げたキャリアに2009年に幕を引くと、デビスカップ日本代表監督や、ATP四日市チャレンジャーのトーナメントディレクター等を歴任した。その彼が今年、現役時代から続くスポンサーや関係者たちの協力を得て、ITF M15(賞金総額15,000ドル)カテゴリーの「ルネサンス国際オープン」を新設。大会は10月20日~27日に福島県で開催され、岩渕氏自らトーナメントディレクターとして、現場で指揮を執る。 ITF M15は、ランキングポイント獲得可能な男子国際大会の中で最も低いグレードの、言わばプロへのとば口だ。その“プロへの扉”が2022年時点ではコロナ禍のため国内で1つもなかったが、23年に3大会、そして今年は「ルネサンス国際オープン」を含め9大会が開催される予定である。 今年に入り岩渕氏は、アシスタントコーチとして錦織圭(元世界4位/現435位)に帯同し、テニス界を構成するピラミッドの最上層の空気をも感得した。そのように、引退後も異なる立場で多くの世界を見聞してきた岩渕氏が、その経験をいかに日本テニス界に還元しようかと考えた時、至ったのが、大会新設だったという。 インスピレーションを与えてくれたのは、内山靖崇(196位)や西岡良仁(86位)ら、大会創設・運営に携わる現役選手たち。そして、伊達公子氏や杉山愛氏らが実行している、選手育成も兼ねた大会運営のモデルケースだ。 今回の大会新設の目的は、「僕の中では、大きく3つある」と岩渕氏は言う。 「一つは、育成です。ジュニア時代から一般の国際大会に出る、あるいは最低限見ることで、そこを特別な場所だと思わないようになってほしい。今回、どれくらい海外から選手が来てくれるかわかりませんが、外国の選手とも対戦や練習をすることで、普段はできないような経験を積んでほしいというのがあります。 もう一つは、プロへのトランジション。今回、ワイルドカード選手権の参加条件を、14歳から18歳までとしました。この年齢の区切りをどこにするか検討を重ねましたが、18歳ならば大学1年生でも出られる人がいる。今、島袋(将)が大卒で活躍し夢を与えてくれているので、まだチャンスを探している人にも出てほしいという思いがあります。 そしてもう一つが、経験あるベテラン選手にも出場してもらい、若手の壁になってほしいと思うんですね。彼らが若手に、『自分たちを超えられないようでは、世界でも厳しいよ』という現実を身をもって教える。同時にベテランたちも、またATPチャレンジャーやグランドスラム予選を目指して優勝を狙ってほしいんです。日本の中で選手層が厚くなると、世界に出た時にギャップが少なくなりますから」