核実験を強行 金正恩政権はどこへ向かおうとしているのか
北朝鮮国民の不満と“草の根”の動き
核開発を軸とした金正恩氏の体制生き残り戦略は、暴走、もしくは迷走と言っても過言ではないのですが、歯がゆいことに国際社会も対処仕切れていません。 国連の制裁は強化されることが予想されますが、そもそも、2006年に制裁が発動されて以後、北朝鮮は今回も含めると3回の核実験を行っています。制裁の実効性については当の国連でさえも「効果は薄い」と認めています。 米国は中東問題などが手一杯で、北朝鮮問題に本格的に取り組み姿勢は見せていません。もっとも期待されている中国でさえも、先述のように関係はさらに悪化すること予想され、北朝鮮への影響力は限定的にならざるをえません。 結局のところ、北朝鮮の暴走を止めるには、北朝鮮という国家自身が姿勢を変わらなければなりません。非常に困難の道筋に見えますが、可能性がないわけではありません。 今回の核実験をめぐり、連日自画自賛する北朝鮮当局と違い、多くの庶民は少なからず不満をもっています。経済復興そっちのけで、核実験や軍事費、そして個人崇拝のための銅像や偶像イベントばかりを進める当局に対する反発は、年々強まっています。 北朝鮮住民に渦巻く不満が、変革運動や暴動に繋がる兆候はありません。一方、彼らは経済政策で頼りにならない国家とは別に、「草の根資本主義」と称される市場をつくりあげ、国を凌駕しつつあります。市場がより拡大し、金正恩体制が市場の声を無視できなくなれば、自ずと北朝鮮は変化せざるをえなくなります。 核実験だけでなく、様々な北朝鮮問題が解決するカギが、ここにあるのです。
■高英起(こう・よんぎ) 北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。ジャーナリストとして雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターなどを務める。主な著作『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』(新潮社)など