男性を遭難へ導いたのは「看板の45度のズレ」だった?プロファイリングで導いた可能性とは
看板の向き
捜索中、警察の捜索に協力していた地元の方から、ひとつ気になる話を聞いた。 一般登山道を登って稜線上へ出た所で、道はT字路となる。そこには「槍ヶ岳」という文字と、山頂への方向を示す矢印が描かれた看板が木にロープで結び付けられている。 Mさんの遭難直後に、その協力員の方が看板を見たら、風でロープが動いてしまったのか、看板の矢印が正しいルートから45度くらいズレていた。そのため反対側を示しているように見えた、と言うのだ。 このT字路をちゃんと右に曲がれば山頂に着く。もしかして、Mさんは間違った方向にズレていた看板を信じて、山頂とは反対側へ向かったのか? それは少し信じ難かった。なぜなら、Mさんが登った日は天気も良く、一般登山道を登っていれば、右側にしっかりと急峻な地形と山頂を望めていたはずだからである。協力員の方も「さすがに左には行かないと思うんだよね」と話していた。 だが、どうしてもこの話が頭から離れなかった。 そこから、私たちが考えた可能性は3つになった。 1 一般登山道を進み、稜線上まで出た後、尾根をいくつも越えていく中で道迷いをしてしまった。 2 一般登山道を進み、稜線上まで出た後、滑落などアクシデントに見舞われて動けなくなってしまった。 3 間違った向きになっていた看板を信じて、正しい方向とは逆に進んでしまい、その先で道に迷ってしまった。 可能性1について、捜索隊が迷い込みの可能性がある箇所を捜索する中で、現在は使われていない廃道が存在することが分かった。廃道にはところどころに古い目印があり、それをたどっていくと、集落へ下りることができた。ただ実際に歩いてみると、私でさえ、GPSで自分の現在地をしっかりと確認しないと不安になるほど荒れていた。 可能性2については、稜線からロープを伝って下まで降りて目視による捜索を行い、また、危険度の高い箇所はドローンを飛ばして稜線までの間を撮影し、画像解析を行うという捜索も行った。 そして、第3の可能性。T字路で反対方向に行ってしまった場合、山頂とは反対方面の稜線に登山道は存在しない。道迷い、転滑落のいずれの可能性もあり、捜索範囲も広大になる。