倒産は”悪”なのか?(横須賀輝尚 経営コンサルタント)
『プロが教える潰れる会社のシグナル(横須賀輝尚 著)』
「日本において、自己破産や倒産は残念ながら”敗北の象徴”です。しかし、倒産は”悪”なのでしょうか?」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。 当然ですが、倒産しても社長の人生は続きます。倒産の前後、再起に向けて社長に求められる対応や姿勢について、横須賀氏の著書『プロが教える潰れる会社のシグナル』より、再構成してお届けします。
■破産・倒産=「悪」とみなす風潮
倒産は 法律上認められた権利ではあるのですが、それでも「人様に迷惑をかけた」「人生の敗北者」などと揶揄され、破産手続き後に再起しようとしても、事情を知っている人からは「元破産者」のレッテルを貼られる。 特にいまやSNSなどによって、一億総情報発信者の時代。どこぞの会社が倒産したなどの話があれば、またたく間に拡散し、部外者からも誹謗中傷が集まってしまう。 もちろん、結果として誰かに迷惑はかかっています。破産すれば、取引先への代金を踏み倒すことになりますし、社員の給料だって未払いのまま終結してしまう。もちろん、社長自身もすべて失い、ある意味「罰」のようなものを受けています。 現在は中小企業の経営者保証に関する中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的ルール「経営者保証に関するガイドライン」によって、かつてのように身ぐるみ剥がされるということはなくなりました。 それでも原則、個人資産はすべて売却となり、これまで蓄積してきたものは、取引先や社員、人脈などすべてを失ってしまう。 でも、起こる批判は、必要以上のもののように感じます。まるで凋落する人を嘲笑って、自分の正当性を主張するかのように。
■多くの社長は会社を潰したくて潰したわけではない
言うまでもなく、詐欺まがいの事業を通じて破産したのならば、自業自得です。破産手続きすら使わせるのもどうかと思うくらい。あるいは、計画倒産のようなものも同じ。それで多くの被害者が出るのであれば、責められても仕方のないことだと思います。 でも、多くの社長は会社を潰したくて潰したわけではないと思うんです。最初は自分の夢を叶えるためや家族のため、徐々に社員のため、お客のため、取引先のために。そして、日本のため世界のため。中には本気で自分の理念の実現に取り組んだ社長もいると思います。 経営を維持するために、リスクも冒してきたはずです。 私は基本的に借り入れをすべきという意見で、その借り入れが盤石な経営を実現するわけですが、ほとんどの場合に社長が連帯保証人になるわけで、状況によっては一発アウトのハイリスクを背負っていると見ることもできます。 そして、倒産という結果を望んでいた人は、ひとりもいないはず。なんとか倒産させないために奔走もしています。 倒産というのは、確かに残念な結果です。でも、過剰なまでに誹謗中傷されてしまうのは、最後の終わらせ方に再考の余地があったのかもしれません。 なお、借り入れに関して補足すると、今後は経営者保証はなくなっていく見通しです。 2022年、金融庁の発表により金融機関は経営者保証を外せない理由を明記しなければならなくなります。基本的に決算書の粉飾等がなく、黒字決算であれば経営者保証は不要ということです。 創業融資も今後は「スタートアップ融資」と呼ばれ原則的には経営者保証が不要となり、今後の「倒産」も変わってくるかもしれません。